捧げ物Novel
□雫 〜ラメント〜
5ページ/13ページ
何時しか風花は牡丹雪に変わっていた。
冷たいけど、関係なかった。
だって彼が暖めてくれるから。
魂を、愛しさで。
………ああ、胸に暖かいモノが積もっていく………。
凄く、心地良い………。
………「幸せだ」と不覚にも思った。
光が湖に射した。
光源は、月。
丸い月。
満月。
それは水鏡に映って………。
酷く、儚かった。
その儚さが、まるで僕達の運命を現しているようで………。
酷く、切なかった。
「舟、乗ってみるか?」
彼は僕が湖を見詰めていたのに気が付いたようで、にこりと笑って提案してくれた。
その笑顔がやはり何処か切なくて、僕は只黙って頷いた。
.