抱きしめたくなる10のお題

□素直 (完結)
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「…風邪とかひいてるの…?」

「は?」

神妙な顔をした魔術師は、黒鋼を見たまま。

からかってるのか、とも黒鋼は思ったが、
そんな様子は微塵もない。

「この国に到着した時に、どこかぶつけたとか、あ、でもちゃんと地面に降りれたし…」

「あ?」

顔を背けてぶつぶつ呟くファイ。

その後も続く。

「ってことはその前かも。
前の国で、着陸失敗してたよね…」

「おい」

「やっぱり、前の国の時かな。
材料は新しいので作ったよね…。
どこか痛いとこある?黒りん!?」

机に乗り出すようにしてファイは黒鋼に尋ねた。

黒鋼をみるファイは真剣な表情だ。

本気で黒鋼を心配しているらしい。

しかし。


「ひとりで何ぶつぶつ言ってやがる」

黒鋼が呆れて言えば、むっとファイが怒る。


何かあったのかと心配しているのに、
黒鋼のこの落ち着き。


―やっぱり…。


心の中で何度めかになる言葉をファイは呟く。

「あのねぇ、」とファイは続けた。

「何かあってからじゃ遅いんだよ?!」

「だから、なんでそうなる」

わけがわからないのは黒鋼の方だ。

何がどうしてこんなことになっているのか。

黒鋼にはよくわからなかった。

黒鋼にすれば、普通に食べていただけだ。

食べ方うんぬんはさておき。


「黒たん、これ」

ファイが、半分のこったホットケーキを指さした。

「…味、どうだった?」

いやに真面目な魔術師の表情に、
「そうだな」と黒鋼は答える。

そして忍者の返事に。






「や、やっぱり黒たん、変ーー!!」




ファイは思いっきり叫んでしまった。





(つづく)
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