抱きしめたくなる10のお題

□甘い涙
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早く、早くとファイの心が急く。

準備は満たんだ。あとはどう渡すかだけ。うきうきとした気分半分、どきどきな気持ちが半分。

「…にしても…」

ファイが待ち合わせの場所で呟く。どこで情報を仕入れたのだろう、あの姫巫女は。



『材料を揃えられるのでしょう?
最高級の小豆を用意させていただきましたわ。
それから、砂糖は領主様から頂き物ですけれど、お使いになってくださいませ』

『あの…』

有無を言わせない知世姫に若干心配になるファイ。

材料がなければ城下町で買いに行こうと思っていた。

作る時間を考えれば、買う手間がはぶけたのは喜ばしいことなのだが。

机の上に様々な器具が並ぶ。

記憶が正しければ、こんな器具は昨日の城の厨房にはなかったはずだ。

つけくわえれば、どれも新品だった。

『…どうかされまして?器具や材料が足らなければ仰ってくださいませ』

にこにこと知世姫に笑まれれば、ファイは何も言えなかった。

礼は述べたけれども…。




「おい」

かけられた声にファイは振り向いた。









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