15万打記念
□縛れ、縛れ
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「雪、男…」
ぎりぎりと押さえつけられた二の腕が痛い。名前をベッドに押し倒して馬乗りになる雪男の表情は全くと言っていいほど無く、いつもは優しいその目は驚くほど冷たいものだった。
「雪男、私……」
「喋らないで、名前。他の男とキスした唇で言い訳なんか聞きたくないから」
熱のない雪男の声と共に彼の大きな手のひらで口元が覆われる。
クラスで仲の良い男子に好きだ、と言われて断る隙すら与えられずキスをされた。まるでドラマのようにタイミング悪く、それを恋人である雪男に見られてしまったというわけだ。
あれは不可抗力だった、そう伝えたくて口元を覆う雪男の手を掴んでじたばたと暴れてみたがそれは逆効果だったらしく、彼は酷く不快そうに眉を寄せて見せた。
「黙れって言ったよね?」
今までに聞いたことのないような雪男の地を這うような低い声に体が竦む。瞠目して動きを止めた名前に満足したのか、口から離れた雪男の両の手が彼女のブラウスのボタンを引きちぎった。
「っ!」
「ほら、動いたらダメだよ」
優しく諭すように微笑を浮かべる雪男は、笑ってはいるが笑ってはいない。名前の中の本能が、これ以上彼を怒らせてはいけない、そう告げていた。漏れそうになる嗚咽に両手で蓋をして何度も頷けば、良い子だね、とそっと頭を撫でられた。
下着のホックを外され、露わになった胸のラインを雪男の指が静かに辿る。こんなときでも名前の体は雪男が与える快楽に従順で、揺れ動きそうになる体をなんとか押し留めた。
「そうそう、動いたらダメだよ」
そんな名前の心境を知ってか雪男が意地悪く笑う。やわやわと胸をほぐされ、もう片手は足の付け根を這う。動いてはいけないという緊張感がより快楽を高め、雪男がショーツの中に指を入れる頃にはそこは名前の愛液で濡れそぼっていた。
「名前は誰が好きなの?」
中途半端に与えられる刺激の中で突如雪男がそんなことを言う。
真意を確かめるように見た雪男の顔は今にも泣きそうに見えて、名前の胸はぎゅっと締め付けられた。
「好き…雪男が好き…世界で一番、雪男が好きだよ。他の人なんて目に入らない。雪男が大好きなの…!」
紛れもない気持ちを吐露したら、何故だか涙が溢れた。雪男を心から愛している。その気持ちに嘘はない。
そんな名前の心からの言葉に、雪男は一瞬目を見開き、そしてくしゃりと表情を歪めて見せた。
「じゃあもっと僕を求めて。もっともっと、他の奴なんか目に入らないぐらいに…!」
悲痛な雪男の声。今にも泣きそうな雪男を、名前は抱き締めた。
今日初めて重なった唇。それが合図のように、名前の中に雪男自身が入り込んでくる。熱すぎる雪男の肉棒は、まるで名前に対する執着心そのものだ。
「あっ、ん!雪男…!雪男…!」
「名前、名前名前名前…!」
何度も何度も唇を交えながら、何度も何度もお互いの名を呼びながら、何度も何度も求め合った。
依存しているのはお互い様だ。何度も絶頂して飛びそうになる意識の中、名前はぼんやりそんなことを思った。