saloon

□my name.
1ページ/1ページ






「…董奉」

「何ですか、思徒少爺。」



私は余裕な振りをして笑うのです。













「董奉、…」

嗚呼、私は貴方に呼ばれる名も持たないのに。



「聞いているか、董奉。」
「おや、いつも人の話はお聞きになられないのに
私に聞け、と?」


薄く笑った。


貴方の話が聞けないのは
思徒様、貴方が私の事を董奉、だなんて呼ぶから。

其れは私の名ではありません。




「はぁ…なんかお前、今日変じゃないか?」
「光栄です、思徒少爺。」

「…相変わらずの変態だな。」


溜め息をつく横顔は美しい。

穢らわしい程、
忌まわしい程、
美しい。

"私だけのバケモノ"にしたいのに。





いいえ、
そんな事は身に余る。

私などがこんな思慕を抱いてはいけないのです。



故に、私は「董奉」。

貴方様の、お馬鹿な董奉の侭で。





「大丈夫か、董奉?俺は、もう帰る。」

「……思徒様。」



──それなのに。


貴方様は、
「御友達」の元へ往くのでしょう?

私の元が本来貴方が「帰る」場所なのに。


何故あんな奴らが良いのですか。
私では、駄目なのですか。
私はこんなにも。こんなにも貴方をお慕いしていますのに。

私は知っています。
貴方は、あのツンツン頭の事が好きなのでしょう───…






…嗚呼、

思徒様。

この思い上がりをどうか。





ぱたん。



「…行かないでください。」


静かな部屋に悲しさが響き。
貴方が行ってから、
私は言えない想いを吐き出す。






嗚呼。

思徒様、思徒様。
思徒様。


思徒様……。








「董、奉?」


先程の扉が開き、貴方がそこにいた。

困ったような顔で私を見て。




「さっき買ったベティを忘れた。」
「…左様で。」


忘れたベティを大切そうに摘んで、貴方は微かに笑った。



お美しい、思徒様。
きっとそれは、私には永遠に向けられぬ笑み。


…ああいけない、私はまた何と思い上がった事を。








「あ。」


貴方は頓狂な声を上げ。

「このベティ、やっぱり持ってた気がするが。」


そう言って、私の方を見やる。



「………!」



要らないか、董奉、
そう云いたいのですか?

私は期待しても宜しいのですか?



「…要らないですよ、そんなばかなもの。」


私は微笑み、馬鹿に強がってみせた。


「…、別にあげるとは言ってないぞ馬鹿っ//
じゃあ、俺は帰る。」




ばたん。



扉の閉まる音。


今度こそ、私はまたしばらく独りですね。

思徒様がベティをくれたかも知れないのに。
下らない強がりのせいで、私はいつも独りになる。







「はあ。」





さて、気を取り直さなければ…

今日は、老爺に呼ばれていますしね。





ふと目を上げると、
そこには先程のベティがちょこんと私のほうを見ていた。




「──!

思徒様…」



私は、改めてそのベティを見て、気づいた。




──ダブってた、なんて嘘でしょう。

このベティは、レアベティとまで行かなくても、
多分貴方は持っていなかった筈。



「思徒様…」


やっぱり、私は「董奉」で良いです。
いえ、「貴方の董奉」、で良かった。





私は泣きたくなり、笑いました。





.....


あとがき。



あ゛…!
初小説、凄く董奉が乙女になってしまった…orz

でも妖的に乙女董奉は結構萌えるのです。

鬼畜董奉も好k(ry

あ、これ 何故董奉がベティに詳しいかというと
董奉も思徒くんの付属品として
ベティには興味があるから。
という謎な設定です(爆!


こんなSSですが
ここまで読んで下さって有難うございました\(^o^)/

今度は裏も書いてみたい(あ




 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ