saloon
□my name.
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「…董奉」
「何ですか、思徒少爺。」
私は余裕な振りをして笑うのです。
「董奉、…」
嗚呼、私は貴方に呼ばれる名も持たないのに。
「聞いているか、董奉。」
「おや、いつも人の話はお聞きになられないのに
私に聞け、と?」
薄く笑った。
貴方の話が聞けないのは
思徒様、貴方が私の事を董奉、だなんて呼ぶから。
其れは私の名ではありません。
「はぁ…なんかお前、今日変じゃないか?」
「光栄です、思徒少爺。」
「…相変わらずの変態だな。」
溜め息をつく横顔は美しい。
穢らわしい程、
忌まわしい程、
美しい。
"私だけのバケモノ"にしたいのに。
いいえ、
そんな事は身に余る。
私などがこんな思慕を抱いてはいけないのです。
故に、私は「董奉」。
貴方様の、お馬鹿な董奉の侭で。
「大丈夫か、董奉?俺は、もう帰る。」
「……思徒様。」
──それなのに。
貴方様は、
「御友達」の元へ往くのでしょう?
私の元が本来貴方が「帰る」場所なのに。
何故あんな奴らが良いのですか。
私では、駄目なのですか。
私はこんなにも。こんなにも貴方をお慕いしていますのに。
私は知っています。
貴方は、あのツンツン頭の事が好きなのでしょう───…
…嗚呼、
思徒様。
この思い上がりをどうか。
ぱたん。
「…行かないでください。」
静かな部屋に悲しさが響き。
貴方が行ってから、
私は言えない想いを吐き出す。
嗚呼。
思徒様、思徒様。
思徒様。
思徒様……。
「董、奉?」
先程の扉が開き、貴方がそこにいた。
困ったような顔で私を見て。
「さっき買ったベティを忘れた。」
「…左様で。」
忘れたベティを大切そうに摘んで、貴方は微かに笑った。
お美しい、思徒様。
きっとそれは、私には永遠に向けられぬ笑み。
…ああいけない、私はまた何と思い上がった事を。
「あ。」
貴方は頓狂な声を上げ。
「このベティ、やっぱり持ってた気がするが。」
そう言って、私の方を見やる。
「………!」
要らないか、董奉、
そう云いたいのですか?
私は期待しても宜しいのですか?
「…要らないですよ、そんなばかなもの。」
私は微笑み、馬鹿に強がってみせた。
「…、別にあげるとは言ってないぞ馬鹿っ//
じゃあ、俺は帰る。」
ばたん。
扉の閉まる音。
今度こそ、私はまたしばらく独りですね。
思徒様がベティをくれたかも知れないのに。
下らない強がりのせいで、私はいつも独りになる。
「はあ。」
さて、気を取り直さなければ…
今日は、老爺に呼ばれていますしね。
ふと目を上げると、
そこには先程のベティがちょこんと私のほうを見ていた。
「──!
思徒様…」
私は、改めてそのベティを見て、気づいた。
──ダブってた、なんて嘘でしょう。
このベティは、レアベティとまで行かなくても、
多分貴方は持っていなかった筈。
「思徒様…」
やっぱり、私は「董奉」で良いです。
いえ、「貴方の董奉」、で良かった。
私は泣きたくなり、笑いました。
.....
あとがき。
あ゛…!
初小説、凄く董奉が乙女になってしまった…orz
でも妖的に乙女董奉は結構萌えるのです。
鬼畜董奉も好k(ry
あ、これ 何故董奉がベティに詳しいかというと
董奉も思徒くんの付属品として
ベティには興味があるから。
という謎な設定です(爆!
こんなSSですが
ここまで読んで下さって有難うございました\(^o^)/
今度は裏も書いてみたい(あ