saloon

□かわいいかわいいおばかさん。
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「言ってもわからんのか、この、バカ月が。」




怒りっぽいお姫様と喧嘩してから、三日経った。

普段俺らはなかなか仲直りしないように見えて、
なんとなく いつも早く仲直りしている。

パシリがいっつも
チカくんシトくん、2人とも早く仲直りしましょうよー、
とかってうるさいからなあ。

あいにく腐女子にやるネタはねえぜ。




今回は大して謝りたくない理由も無かったけれど、
なんとなくいつものように仲直りしてやるのも癪なのでケンカ状態が割と長く続いている。

俺、何かと意地張っちゃうからね。


「シトくん、見てくださいー、ほらチカくんがバイトからもってきたので、今夜は肉ですよー!」
「……要らん。」
「………(ひぃ…!)」


パシリも可哀想だ。
けっ、
まあ普段俺たちを萌えのネタにしてるからいい気味っちゃーいい気味だぜ。




ただ、やっぱり近くにいても睨まれてツンッとされてる、というのはちょっと…堪える。
やっぱり、ムカツクけど好き…だからな。






そもそもの原因は、かなり些細なこと。


「シトよーう。一緒に寝ようぜ寝ようぜー☆」
「…却下だ。」
「そんな事言わないでよー、寝ようぜ!」
「……」
「いいよな?いいよな?」
「……///」
「いいな!」
「……い、…嫌だ///」
「クソシトー!そんなに俺がキライなのかよー」

「……。ああ。嫌いだな、大っ嫌いだ。」
「ちぇっ、なんだよ。じゃー、お休みなさーい」
「人のベッドに入るな!
──ッ、言ってもわからんのか、この、バカ月が。」

シトの目は何故か少しキレていた。
なんだよ、
いつもならなんだかんだ一緒に寝かせてくれるのに。


「はっ、クソシトの癖に!そんな事で怒っちゃってさ、」
「とりあえず、今すぐ出て行け。」

ばたん。
部屋から追い出された。

結局、その夜はパシリと一緒に寝たけど。






俺はなんでシトがあんなに怒ったのかが理解出来なかった。
なんか俺、悪い事、言ったっけ…?

特に、思い当たる節は無かった。




そして、険悪な三日が過ぎた。
俺は日が経つにつれ、やっぱり悪いのは俺かなと思い始めた。
だってシトは悪いとこなかったよな?

…怒りっぽいところ以外に。

謝るのはなんだか癪だけど。

負けるが勝ち、って世間一般では言うそーじゃないか、
それなら結局は俺の勝ちだべや!
しゃーねぇ、謝ってやろうじゃねぇか。






夕飯の席。

「ごちそう様。」

シトは人間離れした驚異的なスピードで飯を食い終わった。
よっぽど俺と顔を合わせていたくないんだろう。

シトは早足で部屋へ帰ろうとしていた。
その背中を気づかれないように追いかける。


シトはぶつぶつと独り言を言っていて。
割と近付いて耳を澄ませば聞こえた。


「あ゛ー…、俺、最悪だな。いや、やっぱりあいつが悪い。
無神経な質問するし、俺にとっては特別な事なのに、みちるとも平気で寝るし」



──え…?



そのままついて行くと、どすん、
と派手な音をたてて
シトの奴は廊下の落とし穴に落ちた。

落とし穴、というか床の老朽化している部分。



「…はは、」

「──?」

シトが突然聞こえた笑い声に振り向く。
床にはまっているその姿とアホ面。


「ふ、はははは!!ひ、腹痛え」
「笑うな…ッ//」
「だ、だって、はは!」

恥ずかしそうに俺を睨む顔。
シトの怒っていた理由もめちゃめちゃかわいくて。


──ああ。
なんでこいつはこんなにアホでかわいいんだろう。
愛おしすぎて、死ねる。


「ほら、シト。」

尻が床にはまっている 奴に手を貸してやる。
奴は嫌々ながらも、俺の手を取り立ち上がった。

「ふはは!シトだっさ!」
「…殺すぞ」

悪態をつきながらも顔が赤い。




あー。

かわいいなー、ちくしょう。




たまらなくなって、
俺は奴の赤い耳元に囁いた。



【これから俺は、シトとしか寝ないよ。ひとりでも、寝ないけど。(笑)】




「馬…鹿…ッ!」


シトはますますあかくなって。




「あ…れ、なんか俺変な事、言っちゃった、かなー、はははは。では寝ようではありませぬか、ははははは。部屋帰ってるわ。」


そのシトに俺も同じくらいあつくなって。
意味の分からない言葉を口走って。




「お前…ッ、そっちは俺の部屋
「よし早く寝なきゃですわね、はやくはやく」


俺は、なんだか異常に恥ずかしくなって、
シトの部屋へ逃げ込み、ベッドへもぐりこんだ。






→おまけ

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