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□※オレと家庭教師
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「手を繋ぎませんか?」
「却下。」

ツレないですねぇなんてニヤニヤ笑みを漏らしながら曰うヤツは、差程気にしてるようには見えない。というかオレの性格をよく知るヤツのことだ、断られることを前提にそんな誘いをかけて来たのだろう。
…――オレも、別に手を繋ぎたくない訳じゃない。

ただ今日は、外だから。

初デート。もう少し甘い雰囲気になるかと思ってたけど、オレの性格柄だいぶ無理らしい。
つーか公衆の面前で男同士手を繋いで歩くとか、マジあり得ねー。むり。ハズすぎる。つーか近所なんだから噂になったら困る。ただでさえコイツ顔"は"いいんだから目立つんだよ。

「また可愛い事を考えてますねぇ。」
「ばッ…!考えてねーよ!読むな心を!」

慌てて否定したつもりだったが、「"読むな"なんて言ったら肯定でしょう」なんて笑われた。その笑みが自然すぎて、不意打ちで、オレはやっと桐生のそばにいれていると思えるのだ。
告白し、告白された。筈なのに、オレは未だに返事をしていない。この面倒な性格の所為で、結局オレはタイミングを逃してしまった。

オレの気持ちを解っていながら、奴は強制しようとはしない。奴なりに気を使っているのだろうか。


「映画なんて久々だなァ…」

うだうだ考えるのは性に合わず、オレは繋ぐことはない手をポケットにしまって話を作った。

「私はよく行ってますけどねぇ。」
「何見んの?」
「ジブリなどは別ですが、アニメや特撮以外は無節操ですよ。」

遠回しに今回見るアニメ映画をつつかれた気がする。どうせジャ○プのアニメだよ。
…この歯がゆさは趣味が合わないだけなのか、オレが子どもなのか。

「子供でしょう。そんな素直クンもかw「うるさい!」

コイツとだともう真面目に考えるのも嫌になるなチキショウ。映画に付き合ってくれるのは有り難いが色々面倒くさいマジで。

…コイツは本当に、オレのことが好きなんだろうか。

めちゃくちゃな不安に駆られることがある。またからかわれてるとか、そういう類いの冗談ではないのかみたいな。
いつも飄々とした奴の本心っつーのは、全然読めやしない。

「如何かしましたか? 彼女サンと付き合っている頃のような顔をしていますよ。」
「ッは!?え、は…?」
「ほら、此処。」

くいくい、と桐生の指先が俺の眉間を解すようにつついてきた。何事か唖然としていると、また小さな笑いがヤツから零れる。



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