桜谷は、よく笑う。
記者の桜谷は、人と接することが多い。取材で必要な情報は、人から貰った方が面白いから。多少ガセでも大袈裟であっても、それは、ネタのスパイス。らしい。
だから人から一番聞きやすい表情、笑顔が、上手い。
「先輩?難しい顔してどした?」
…あまりに、ジッと見過ぎたみたいだ。
「…なんでも、」
「そ?」
ふわり。微笑む、優しい顔。
相手がいれば、すぐ笑む優しい桜谷。
「桜谷は…」
「ん?」
「いつも…そんな風に、微笑浮かべれる?」
「ビショウ?ああ、笑ってられるかって?」
「ん。」
「記者だからってのもあるし、
先輩が一緒だから、一段とね。」
一瞬、なんて答えていいか、わからなくなった。してやったりのにっこりな微笑み。
…不意打ち、だ。
「桜谷の、ばか。」
「うん。先輩バカだもん。」
「取材、次。」
「わかってるよ、っと」
先に、歩いて行く桜谷。…振り向かれたら、ちょっと 困る。
『……緒里、どうすれば、いい?』
彼に向けたのと、ちょっと違う。だけどとても、よく似た気持ち。
今は、取り敢えず…桜谷の優しさに甘えよう。
笑う5のお題
―― 01:微笑む
配布元:ハライセ