頂き物

□恋の解答
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とんとん、と、階段を昇ってくる音がする。


この軽快な足音はシロちゃんに間違いない。


毎日聞くこの音が、待ち遠しくも嬉しくもあり。


それが恋だと気が付いたのは、ほんの少し前。















恋の解答












「こんばんは、シロちゃん」




扉が開いたと同時に声をかける。

少し驚いて、よぉなんていつもどおりの声が漏れて。

いつもと同じように専用の座布団の上に座ったのは、隣に住む幼馴染 日番谷冬獅郎……シロちゃん。

何をする訳でもなく、学校が終わって、夜ご飯を食べれば、シロちゃんはあたしの部屋に遊びに来る。

幼い頃から続く日常。

そんな当たり前の中で、その感情に気が付いた。


いつから?と問われれば、わからない。


ただ、あたしはシロちゃんに恋をしている。


おそらくずっと昔から。












「桃、これ借りてたCD」


「あ、うん。置いといて」


「おう」




まるで自分の勝手知ったる部屋のように振舞うシロちゃん。

そんな些細なことが少し嬉しい。

だって、それだけ二人の間に遠慮とかないのだと感じるから。








「シロちゃん。この小説おもしろいんだよ」


「へぇ…じゃあ借りてく」


「うん。どうぞ」




自分がいいなと思ったものは、必ずシロちゃんに勧めてみる。

同じ喜びを共有できることは、とても幸せなことだから。







本棚から雑誌をとりだして、その翡翠色の瞳は文字を目で追うように動いて。





揺れる銀髪。



深く澄んだ瞳。



細い体に似合わない少しごつい掌。



そんな毎日眺めている姿に、ドキドキは止まらない。







「どうした、桃?じっと見て」


「ううん、何でもないよ」







その優しく目を細める仕草も好き。




「照れるから…あんま見るな」


「そんなこと言われたらもっと見たくなるかな」


「見るなっての」




照れさせたい訳じゃないの。


この空気が好き。


じゃれあうように、過ごす時間が大切なんだよ。










「そういや…桃。おまえさ…」




何かを思い出したかのように、突然言葉を発した彼。




「…ん?なぁに?」


「昨日俺の友達の告白断ったんだろ?」




シロちゃんの友達なんだから、知ってても当然。




「うん。断ったよ」


「そっか」





さらりと告げられる言葉。


あいついい奴なのに、とか、友達を擁護することを言われれば、諦めなきゃいけない恋なのだと、そう自覚するんだけれど。





その後は何もなかったかように、いつもどおりの時間が過ぎていく。




 
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