やおよろず

□小噺[弐]
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てーん、てーん。
烏天狗は、境内を横切った丸い物体を目で追った。
同じようにころころと転がっていく毛玉を見ると、今度は首を傾げる。
色褪せた丸い物体に薄汚れた毛玉が追い付いた。

「なにしとるんじゃ」

丸い物体に戯れるようにまとわりついたかと思うと、今度は丸い物体と交互になって跳ね始めた仔狸は、ぴょこんと毛の中から顔を出した。
呆れた顔で縁に座っている烏天狗を見遣って、ぴょんぴょんと跳ねたまま答える。

「鞠ついてんだべ」
「鞠?それがかの」

どうやら色褪せた丸い物体は鞠だったらしい。



【毛玉姫と手鞠歌】

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