やおよろず

□小噺[弐]
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てーん、てーんと交互に跳ねる丸二つを烏天狗はしばらく眺めていたものの、可笑しそうに頬を緩めた。

「仔狸よ。それでは毛玉がつかれておるのか、ついておるのか解らんの」

くつくつと烏天狗は笑う。
すると仔狸は何を思ったのか、高く跳ぶと宙返りをした。
くるりと回った毛玉が、ぽんと軽い音を立てる。
すると、荒れた境内に着地したのは幼子だった。
赤と桃の可愛らしい色の着物を羽織り、朱の組紐で艶やかな黒髪を結った幼姫。
幼子に化けた仔狸は、転がっていた鞠を追いかけてちょこちょこと境内を駆ける。
そうして鞠を捕まえると、ひどく自慢げな顔をして烏天狗を振り返った。
ふくふくとした白い顔の真ん中で、桃色の唇が弧を描く。

「これなら可笑しくないべ?」

フフンと笑って、てーんてーんと鞠をつき始める。
可愛らしい声で小さく歌うのは手鞠歌だろうか。




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