やおよろず
□小噺[参]
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「…また派手な登場じゃのう」
着物の袖で口元を覆った烏天狗は、溜め息混じりにぼやいた。
すると前方からはヒョウヒョウと気味の悪い声が飛んでくる。
「良いではないか!そうケチなことを言うな!」
地響きすら起こしそうな勢いで踏み出された足は虎。
足に絡むようにシュルリと伸びた蛇が口を開けて笑う。
「ケチではないわい。お前が毎度その登場で人の家を破壊するからじゃろうが」
「以前にそう愚痴られたからな、今日は堂に降りなかったのだぞ」
「お陰で境内が台無しじゃ」
「はっ!貴様もケチケチ良く言うわ!」
「じゃから、ケチではないと言うておろうが」
ふぅと溜め息を吐けば、また笑い声が飛んだ。