「悪魔の瞳は…」
□<第一章>出会いは悲劇から…
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焼けた肉の匂いが私の鼻を掠める。
私は唯、恋人である彼方と身を寄せて震えていた。
「どうするの?
…怖いよ…。」
向こうで一人の人が死体を漁っている。
その人は右手に血の付いた刀を持ちながら、
死体の首に噛みついては離し、口を拭い
…とそれを繰り返していた。
その行為の理由を私は知らない。
「平気、僕が夏波を守るから…。」
彼方の短い黒い髪が炎を写し、赤く見える。
私達が隠れる木の向こうでは相変わらず、
肉を踏む気持ち悪い足音がしている。
「あと私達だけだよ?
隠れてないで逃げようよ…。」
私は怖くなって彼方の着物の胸辺りを力一杯握る。
彼方は私の気持ちを汲み取ったのか、その手を優しく包んだ。
「平気だよ…今は夜だ。
満月とはいえ、月明かりだけじゃ見つからないよ。」
私は小刻みに震えていた。
私は堪えきれず安心を求めて彼方の胸に耳をつけた。
直線肌から鼓動が聞こえて来る。
「怖いよ…怖いよ…。」
その時、足音が止んだ。