09/29の日記

13:51
no.1-さよならリマジハタウン(3)
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視界が真っ白になる。
「うがああぁ!!」
しばらくするとふぶきは収まった。
ストライクとザングースは摘むっていた目を開ける。
「攻撃が当たってないぜ!!」
確かに相手ポケモンにダメージはないようだ。
「ふぶきは命中率が低いことをご存知ないのですか?」
しかし、二人の馬鹿にした台詞にユウキは笑って返す。
「知ってるさ、そんなの。でも…」
突然、ストライクがバタリと倒れた。
「どうした、ストライク!!」
突然のことに慌てるスカイ団。
「ふぶきで一気に倒すのもいいけど、あられ状態にすればグラエナにダメージがくる」
スカイ団は驚いた顔でユウキを見る。
「だからふぶきに便乗してストライクに攻撃を…」
想定外な強さだ。
スカイ団に緊張が走る。
「でも、まだ俺のザングースが残って――!!」
しかし、そのザングースもバタリと倒れる。
その背後にはグラエナが堂々と立っていた。
「な、ザングース!?」
あまりの出来事に我を忘れるスカイ団に、呆れたようにユウキが呟く。
「あんたらが驚いてる間に倒しちゃったよ」
「くっ、戻れストライク!!」
気絶してしまったストライクをモンスターボールに戻すスカイ団。
しかしザングースはまだ意識があるようだ。
グラつく体を踏ん張って立ち上がる。
これにはさすがのユウキも見直した。
「倒したと思ったのに。ザングースやるね」
しかしこれも時間の問題のようだ。後はグラエナの判断に委せて、その隙にユウキはトワの所へ向かう。
「ユウキさん!!」
「もう大丈夫だ、ちょっと待ってろ!!」
ユウキは絡まる縄を外しにかかる。
「待ちなさい!!」
止めに入ろうとスカイ団は駆け出すが、ユキメノコに行く手を阻まれ止めることができない。もうひとりの方はバトルに夢中だ。
しばらくして、やっとトワは自由になった。
ゴースがトワのもとに飛び込んできた。
「そいつがオレ達を案内してくれたんだ」
「そうだったんですか…。ありがとう、ゴース」
トワとゴースは互いに微笑み合った。
とにかくこれで一安心だ。
「大変です、逃げてしまいますよ!!」
スカイ団がもうひとりの方に大声で伝える。
スカイ団はしびれを切らしたのか、バトルに投げやり状態で挑んできた。
「くそっ、これで終わらせてやる!!ザングース、だいもんじ!!」
ザングースはずーっと大きく息を吸い込み始めた。
「グラエナ、ユキメノコ、もういい!!みんな逃げろ!!」
グラエナはまだいいが、ユキメノコは当たれば致命傷になりかねない。
ユウキはユキメノコをボールに戻すと、トワの手を引いて走り出した。
「逃がしませんよ!!」
「あっ!!」
スカイ団のひとりがトワの髪を鷲掴みにした。
トワの体がぐいっと後ろに引っ張られる。
「放せッ!!」
ユウキはスカイ団の腹に力任せに蹴りを入れる。
同時にゴースがスカイ団の顔を舐めた。
怯んで手を放すスカイ団。
また急いで走り出す。
「馬鹿、やめなさい!!死んでしまったらどうするんですかっ!!」
冷静なスカイ団の声に短気なスカイ団はハッと強張る。
しかしもう遅い。
だいもんじが放たれた。
地面を這いながら、炎で作られた大きな大の文字が一気に近づいてくる。
逃げきれない!!!!
「トワッ!!」
ユウキは自分を盾にするようにトワを抱きしめた。
グラエナやゴースも二人を守るように対峙する。

私のせいで関係のない人達が傷つく―――。
そんなの、もう見たくない!!

「だめ――――ッ!!」
トワはユウキの腕をすり抜け、両手を広げて立ちはだかった。
「!?、トワ!!」
グラエナとゴースも予想外のトワの行動に仰天する。
ユウキは急いでトワに駆け寄るが、かばいきれない。
トワは腕を握られるのを感じた。
ユウキがまだ自分を助けようとしてくれている。
(ユウキさん…!!)

終わった―――

誰もがそう思っただろう。
しかし奇跡が起こった。
目の前まで迫っていただいもんじが突然止まったのだ。
正確に言えば、見えない壁がだいもんじの行く手を阻んでいるかのようだ。
目の前で『バチバチッ』と凄まじい炎が燃え上がっている。
「…え?」
呆然となるユウキとグラエナとゴース。
「な、何が起きたんだぁ!?」
スカイ団も予想外なハプニングに慌てている。
そして、だいもんじとトワの間、丁度見えない壁があるあたりに白く淡い光が現れた。
人の頭と同じほどの大きさ。
それがトワの目の前に浮いている。
もはやユウキ達は何が何だかわからない。
『無茶をするなってあれほど言ったのに』
トワの耳に久しく聞いていなかった懐かしい声が聞こえた。
グラエナとゴースが反応する。
しかしユウキには聞こえていないようだ。
この声は…
「…ミュ…ウ…?」
小さく呟くトワ。
声の主は嬉しそうに答える。
『やっと…出会ったんだね。見失っちゃだめだよ、トワ』
すると、突然だいもんじが弾かれたようにすごい勢いで別の方向に飛んでいった。
だいもんじがはね返されたのだ。それは一直線にスカイ団の方へ向かっていく。
「ぎゃああああぁ!!!!」
必死に逃げたが遅く、見事スカイ団にだいもんじが直撃した。
次の瞬間、大爆発が起きた。
ユウキはトワを引き寄せて、凄まじい爆風から守る。
もちろんこの時、星になったスカイ団にユウキ達が気づくことはできなかった。



しばらくして、やっと煙が晴れた。
「あれ、さっきの光は!?」
光は煙と共に姿を消してしまっていた。
とにかく不思議な光だった。
まるでユウキ達を守っていたかのような…。
それによくわからないが、トワとグラエナ達の様子が少しおかしかった。
「ありがとう、ゴース」
トワはゴースに別れを告げ、ゴースが飛んでいく姿を見送った。
ユウキは、空を仰ぎ見ているトワを見つめる。
(トワは…いったい何者なんだろう…)
しかしユウキが考えたって答えは出てこない。
トワは多分ポケモントレーナーではない。
だったら、もしまた今回みたいに襲われたら誰がトワを守るんだ…?
トワはもう歩き出している。
自分は夢を語るだけで、実際何も始まっていない。
(オレの、やるべきこと――…)
グラエナがユウキの袖を引っ張ってきた。
そうだ。
オレにはグラエナ達がいる。
何を怖がることがあるんだ?
その時、木々の間から声が聞こえてきた。
リマジハタウンの人達が次々姿を現す。
「おお〜い、大丈夫か〜!?」
ユウキは大声で叫んだ。
「あったりまえだろッ!!」



夜明け。
トワはリマジハタウンの人達にバレないよう、こっそりリトナシティに向け出発した。
ユウキの顔も見ていないし、もちろんさよならも言っていない。
顔を見てしまえば、きっと決意が揺るいでしまうから…。
ハマザの森が見えてきた。
(さよなら、ユウキさん)
一度振り返って、また歩き出す。
入り口がだんだん見えてきた。
しかしトワは途中で歩みを止めた。
入り口に誰かがいる。
「また黙って行くつもりか?」
「ユ、ユウキさん!?」
トワは急いで駆け寄る。
入り口に立っていたのはユウキとグラエナだった。
しかし昨日と格好が違う。
ラフなのに変わりはないが、使いやすそうなパーカーやズボン、ブーツを履いて、リュックを背負っている。
腰のベルトには小さくなったモンスターボールが、グラエナの分を含め3つ並んでいる。
旅の格好そのものだ。
「どうしたんですか!?その格好…」
驚いて問いかけるトワ。
「どうしたって…旅に出るんだよ、旅に!!」
ユウキは当たり前だろ、と言うように答える。
呆然とするトワ。
まさか――…
「旅に出ようって前々から思ってたしさ。それが早まっただけ」
うそ――…
「元々トワと目的は同じなんだ。だったら一緒に旅した方がいいじゃん?楽しいし、トワのこと守ってあげられるし…」
本当に――…?
「…もしかして嫌?もう一緒に旅してるヤツいるとか?」
何も言わないトワに、心配になってユウキが尋ねた。
トワは我に返ったように慌てて否定する。
「そ、そんなことないですッ!!でもッ…」
トワは下をうつ向き、悲しそうに呟く。
「私と旅をすれば、ユウキさんは絶対危険な目に遭います…。…それでも…ですか…?」
「そんなの、昨日ので充分承知だよ」
ユウキはトワのうつ向いた頭の上に手をポンッと乗せた。
トワが驚いたようにユウキを見る。
「オレはそうゆうのからトワを守る!!そんでもって、トワと一緒に『月虹花』を見つける!!どォ?」
楽しそうにトワに話しかけるユウキ。
トワの顔に自然と笑みがこみ上げてくる。
「よっしゃァ!!決まりだな、トワ!!」
ガッツポーズを決めてみせるユウキ。
グラエナも嬉しそうに吠える。
信じられない。
まさか、自分に友達ができるなんて…
「ありがとうございます、ユウキさん…」
嬉しくて声が少し震えた。
「あ、それだめ!!」
いきなりユウキがトワを指さした。
トワは驚いて目をパチクリさせる。
「オレ達はもう友達なんだ。距離置いてどうするんだよ」
何が何だかわからず、トワはユウキを見つめる。
「敬語とか使うなよ。友達なんだからさ!!」
滲んできた涙を拭って、トワは力強く頷く。
「オレはユウキ!!な、トワ!!」
差し出された手をトワは見つめる。

私がずっと欲しかったもの。
それが手に入った時、そして…失った時が怖い――…

トワはユウキを見つめた。
失う日は必ず来る。
それでも、それでも…!!
「ユ…ウキ…」
口から溢れた生まれて初めてのわがまま。
一緒にいたい。
ユウキと、一緒にいたい。
「そうそう!!よろしくな、トワ!!」
「よろしくね、ユウキ、グラエナ!!」
ひとつだった影は、もうひとつではない。
地上を照らす朝日が、トワ達を送り出すかのように温かかった。



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