10/02の日記

10:37
no.3-バッジケースを取り戻せ!!リトナのいたずらリス-後編(1)
---------------
道はわからない。
ただひたすらトワは走る。
後ろからの足音は自分の足音が反響してしまって聞こえない。いや、聞く余裕さえなかった。行き先がわからないように、なるべく角という角を右左右左と曲がる。
すると別の広々とした空間に出てしまった。大きな配管が中央を横断し、周りに細い配管が交差している。見渡してみても上に付いている廊下みたいなもの以外に出口らしきものはない。パチリスなら行けるかもしれないが、もちろんトワには届かない。
そうこうしている内に外から足音が聞こえてきた。
パチリスが急かすようにトワの頬をぴたぴたと叩く。しかし隠れようにも隠れる場所がない。また外に出て別の道を行くには時間がなさすぎる。
足音がもうすぐそこまで近づいている。
トワは覚悟を決めた。
そして…。
「見つけましたよ、瑠璃巫姫」
息を切らしたイスミが部屋に飛込んできた。トワはキッとイスミを睨みつける。しかしそんなのどこ吹く風か、イスミはさらっと受け流す。
「もう逃げ場はありませんよ。さぁ、一緒に来て頂きましょうか」
イスミが近づく度に後退していくトワ。
ユウキがすぐ助けに来てくれる。それまでは何が何でも捕まらない!!
トワは深呼吸をして呼吸を整えた。
「あなた達何で私のことを知ってるんです?私が神殿から出てきていることは、ほんの一握りの神官しか知らないはずなのに…」
「さあ、リーダーからの命令なのでそこまでは」
イスミの答えに、トワは顔が青ざめていく気がした。
「もしかして…スカイ団の全員がですか…?」
トワの悲痛な声にイスミが失笑する。
「まさか。全員が知っていたら貴女は今こんな所にいられないでしょう?」
こんな大切な情報はトップ中のトップしか知りませんよ、とイスミは囁く。
「他の団員は貴女の素性を知らされていません」
するとイスミは突然優しい口調になると、トワに片手を差しのべてきた。
「貴女に悪いことはしません。私達と一緒に来ていただけませんか?」
しかし頑固としてトワはイスミを睨みつけたままだ。その様子にイスミは肩をすくめて軽いため息を吐く。
「それでは取引きをしましょう、巫姫」
「…取引き?」
するとイスミは内ポケットから何かを取り出してきた。その手に握られているのは銀色のケース。
「パチィ!!」
トワの肩でパチリスが騒ぐ。まさしく探していたユウキのバッジケース!!
イスミはバッジケースを右手に掲げてトワに提案してきた。
「このケースと引き換えに、瑠璃巫姫、貴女が私達に協力するというのはどうでしょう?」
「なぜそのバッジケースと私が?」
トワはわざとそっけない態度を示す。そうすればもう少し時間も稼げると思ったからだ。
しかしスカイ団も考えていた。
「これはリトナジムのジムリーダーが取り返そうとしていた物です。ジムリーダーと貴女達が何ら関わりがあるのは先ほどわかりましたから…」
トワの背中に壁がぶつかる。もうこれ以上後退出来ない。
「貴女の性格からして、放ってはおけないでしょう?」
トワは悔しそうに顔を歪める。確かにどうにかしてあのバッジケースは取り返したい。
しかしスカイ団に協力するのだけは…。
そしてトワは肩に乗っているパチリスに、スカイ団にわからないよう小さく耳打ちをした。パチリスは少し驚いたようだが、小さくひと鳴きしてみせる。
「用が済めば速やかにイチセタウンにお送りしますよ」
もうトワとイスミの距離は2メートルもない。
トワとパチリスに緊張が走る。一歩、一歩…もうちょっと…
(今だっ!!)
「パチリス!!」
イスミがトワの数歩前まで迫った瞬間、トワの声を合図にしてパチリスがイスミに飛びついた。
「ぐっ!?」
突然のことにイスミは驚き、とっさにパチリスを振り払う。だがパチリスは見事床に着地した。そしてその両手にはバッジケースが抱えられている。
「ま、待てッ!!」
イスミは急いでパチリスを捕まえようとしたが、パチリスは一目散に走り出してしまった。
「ハメられましたね」
イスミはそう楽しそうに呟くとトワの手をぐっと掴んだ。掴まれた腕に痛みが走り、トワは思わず顔を歪める。
「それでは、一緒に来て頂きましょうか」
イスミは楽しくてどうしようもないと言うように顔を歪めてほくそ笑んでいた。


「急げ、グラエナ!!」
早く行かないとトワが危ない!!
くねくねと道を曲がり、随分行った所で急にグラエナが足を止めた。
「パチリス!!」
ユウキは前から全力疾走してきたパチリスをぼふっと捕まえた。パチリスの口には、かなり重かっただろう、ユウキのバッジケースが食わえられていた。
それを受け取って、ユウキは辺りを見回す。やはりトワの姿が見えない。
するとパチリスはバッとユウキからすり抜けると、付いてこいと合図して、あっと言う間に駆け出した。ユウキとグラエナは急いで後を追う。
そして広々とした空間に出た。その1番奥の所に―――…
「トワ!!」
ユウキは有らん限りの声で彼女の名前を叫んだ。
「…っ、ユウキ!!」
トワは走り出そうと駆け出すが、隣に立つ人物に腕を無理矢理引っ張られる。
「スカイ団…!!」
ユウキはイスミを睨みつける。「やはり来ましたね、王子様が」
イスミは楽しそうに笑った。
「おや、あのパチリスも」
「トワを返せ!!」
ユウキは声を荒げる。
「それは出来ない相談ですね。手荒でしたけど、一応取引が成立したんですから」
トワをぐっと引き寄せ、イスミは笑う。
「取引きって何だ?」
「貴方が探していたバッジケースと交換条件を」
それを聞くや否や、ユウキはポケットからそのバッジケースを取り出した。
「じゃあ、コイツと交換だ」
しかしイスミは失笑する。
「だめですよ。そもそもそれはあなたの物ではないでしょう?」
今度はユウキが失笑する。
「お前知ってるか?僅か12歳にしてミハラ地方を制覇した天才少年の話」
イスミは小馬鹿にするように答える。
「ああ、知っていますよ。その少年がグラエナをパートナーにしていたものだから、ポチエナやグラエナが大流行して…」
「そいつの名前は?」
イスミはそのままの調子で続ける。
「確か、リマジハの…」
そしてハッとした表情でイスミは口を摘むぐ。代わりにユウキがニヤッと笑ってみせた。
しかしイスミはすぐ元に戻ると、モンスターボールを取り出した。
「そんな子供騙し、通用するほど私は甘くないですよ」
そしてストライクを繰り出した。
「あなたがその少年だと言うのなら、私を倒して彼女を取り返しなさい」
ユウキは呆れたようにため息を吐くが、すぐ楽しそうにイスミに目を向ける。
「説明するの面倒だしな。それにこういう方が好きだし」
「そうですか。それでは早速始めましょう」
そう言うと、イスミはトワを自分の後ろへ追いやる。
トワはユウキを見た。
ユウキと目が合う。
いけない!!
あの事を伝えないと…!!
「ユウキ、ダメ!!この人はまだ――…」
「いけませんよ。それとも、ここで正体を明かしてもいいのですか?」
遮るようにイスミが、トワにしか聞こえないような声で囁く。ぐっと詰まるトワ。ユウキにはトワが何を言いたかったのかは分からない。しかしトワを気づかって、安心させるように笑いかける。
「大丈夫だ、トワ。すぐに助けるから待ってて」
そしてイスミと対峙する。
ユウキはチラッとグラエナを見る。むしタイプにあくタイプは相性が悪い。未数値なので、ここは慎重にいきたい。
そうなるとすれば…
「いけ、ユキメノコ!!」
投げたボールからユキメノコが飛び出した。そしていきなりグラエナに一直線を決め込む。
「こらッ、ユキメノコ…!!」
グラエナに引っ付くユキメノコを剥がすユウキ。ストライクの姿に気がつくと、ユキメノコはユウキに向かってガッツポーズをしてみせた。ユウキもそれに応える。
そして、しばらくの沈黙――…。
「ユキメノコ、こおりのつぶて!!」
「ストライク、きりさく!!」
二匹とも同時に相手に向かって走り出した。しかし、レベルの差からか、ユキメノコの攻撃が先だ。容赦なく氷がストライクの体を殴りつける。
しかしストライクはそれにもめげず、素早い動きで剃刀のような腕を突き出す。それがユキメノコの袖をかすった。バッとストライクはユキメノコと距離を取る。
しかしユウキはそれを許さなかった。
「ユキメノコ、ストライクを逃がすな!!」
スピードはむしろユキメノコの方が速いため、すぐに追いついてしまった。ストライクのすぐ目の前にはユキメノコだ。
「ユキメノコ、れいとうビーム!!」
充分近づいたところを見計って出されたユウキの指示に素早く反応して、ユキメノコはストライクの土手っ腹にれいとうビームをお見舞いしてやった。れいとうビームに押されるように壁に殴りつけられたストライクは、そのまま気絶してしまった。
「速いですね。さすがです」
イスミはストライクを戻して拍手を送る。しかしユウキがそれを快く思うはずもなく…。
「ポケモン1匹しかいないんだろ?そんな余裕でいいわけ?」
しかしイスミは余裕の表情だ。
「誰が1匹だなんて言いましたか?」
そしてイスミは腰に手を回すと、残り4つのモンスターボールを見せた。ユウキは驚いてそれを見る。
「手持ちが1匹だけだなんて、そんな馬鹿なことはしませんよ」
トワが言いかけたのはこのことだったのか。
「ハナッから持ってたのか」
ユウキは吐き捨てるように呟く。トワは額に汗を滲ませてそれを見守る。トワは偶然そのボールを見ただけで、中にどんなポケモンが入っているのかはわからない。
「何で最初から出さなかったんだ?」
「まず力量を見たかったんですよ。それに相手も油断するでしょう?」
実際油断したために、ユウキはかなり勘に触った。
「さあ、次に行きますよ」
イスミはそんなユウキを楽しむように次のポケモンを繰り出した。出てきたのはウソッキー。
「ウソッキー…?」
トワは不思議そうに呟く。
岩タイプが水タイプと相性が悪いのは常識。ユキメノコは氷タイプなのだから、水タイプと同じように思えるのだが…。
しかしユウキは眉を歪めると、ユキメノコをボールに戻してしまった。
「やはり引っ掛かりませんか」
イスミは残念そうに呟くが、それも想定内のことのようだ。
「氷タイプって岩タイプに有利なんじゃ…」
「それは地面タイプでしょう」
呟くトワにイスミが説明を入れた。
「以外と、こういう部分に関して確かな知識として広がっていないのですよ」
そんなことをしている内に、ユウキは次に繰り出すポケモンを決めたようだ。ユウキはベルトに手を回すと、ベルトに付いた3つ目のボールを手にする。
――3つ目!?
トワでもまだ見たことがない3匹目のポケモン。
「いけ――」
ボールがユウキの手を離れ、気持よく地面にバウンドする。そして蓋がパカッと開いた。
「グガアァァァア!!!!」
同時に耳を刺すような凄まじい咆吼が轟く。
「な…」
イスミは言葉を失う。
トワもその声、姿に圧倒されて体が動かなかった。
「ガブリアス!!」
巨大だが細い体のライン。その大きな牙と同じような鋭い視線に思わず怯んでしまう。
しかし、ユウキのガブリアスは普通と違かった。
まず体の色だ。普通は紺色の肌なのだが、目の前に立ち上がったガブリアスはなんと黒耀石のような漆黒の肌をしているのだ。それに、体長も平均の1.9mをゆうに越え2m以上はある巨体だ。
「黒いし、大きい…」
トワは唖然として呟く。
「色の違いは遺伝子の突然変異が原因と考えられています。しかし、この大きさは驚きです」
イスミも驚きを隠しきれないようだ。
「外面だけでそんな驚いてんなよ。"自称"リマジハのユウキの腕の見せ所はこっからだぜ」
グラエナと軽い挨拶を交したガブリアスは、ユウキに呼応するように太い尾を一振りしてみせる。大きく地面が揺れ、80cmほど飛び上がったトワは強く尻餅を着いてしまった。せっかく格好良く決めたユウキも尻餅を着いて台無しだ。
「ガブリアス…!!」
ガブリアスはユウキに怒られて、あの長い爪で頭を掻いた。
「終わらせるぞ、ガブリアス!!」


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10:32
no.2-バッジケースを取り戻せ!!リトナのいたずらリス-前編(3)
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「ゼ〜ハ〜…ゼ〜ハ〜…」
トレーナーはユウキ達に追いつくと、しばらく前屈みになって息を切らしていた。
「ど、どうしたんだ?」
落ち着いたところでユウキがトレーナーに尋ねる。トレーナーは必死な形相でユウキに迫る。まだ息が上がっており、声が掠れていた。
「シュウさんが…パチリスを追って…スカイ団の所へ…!!」
「そんな!!ひとりで!?」
トワはユウキの隣で思わず叫んだ。ユウキの額にも冷汗が伝う。
「は、早く…行ってあげ――…」
ふとトレーナーは顔を上げた。すると目の前にはパチリスを抱いたトワが。
「!!?、パ、パチリス!?」
ひっくり反った声が公園内にこだまする。トレーナーの顔は目玉が飛び出しそうなほど驚いていた。
理由はわからないでもないが。
「何でトワさんが!?」
完全に混乱状態だ。
トワは大体のことをトレーナーに説明した。トレーナーは慌てたようにオロオロする。
「そ、それじゃ、シュウさんは…!!」
「とにかく、シュウを助けに行こう!!」
トワがトレーナーに手を貸して起き上がらせた。
「シュウさんはどちらへ!?」
「リトナデパートの裏路地に!!僕のことは構わず、早く行ってください!!」
トワは頷くと、パチリスを自分の肩に乗せた。ユウキはユキメノコをボールに戻す。
「行こう、トワ!!」
「うん!!」


スカイ団が今いるのは人が滅多に来ない見捨てられた工場。さすがに裏路地では人目についてしまう可能性があるからだ。もちろん街からは随分離れている。
「ったく、あのパチリス、思いっきり溝落ちに突っ込みやがって!!」
短気なスカイ団が悪態を吐いた。冷静なスカイ団はそんなことには目もくれず、パチリスが落としていった銀色のケースに釘付けだ。
「バッジケースみたいですけれど…。何故こんなものをパチリスが…?」
ケースを裏に反してみると名前が彫られている。
「…削れて読めない…」
バッジケースは長年愛用されていたのか、名前が削れて読めないほどだった。
「開けてみようぜ」
好奇心旺盛な短気なスカイ団がワクワクしながら近寄ってきた。冷静なスカイ団は慎重にケースの蓋を開ける。
「!!」
「すげっ…」
中を見たスカイ団はしばらくの間固まってしまった。あまりにも思いがけないことだったのだ。
バッジケースの中には8つのバッジ全てが綺麗に並べられていた。しかも、蓋の所には一際輝く大きなバッジ。
「これは、ミハラ地方殿堂入りを証明するチャンピオンバッジ…」
「このトレーナー、すごく強えぇじゃねぇか…!!」
スカイ団は困ったように互いを見る。
「…どうしますか、これ…?」
「売ったらかなりの大金になるぞ?…ってか、何でこんなすげぇものをパチリスが…」
戸惑う二人。
すると、突然背後から地面を踏む音が鳴った。スカイ団はバッと振り返る。
「あ〜、バレちまった…」
そこにはひとりの青年が立っていた。青年は忍び足の途中で固まったまま呟く。
スカイ団はその姿を見ると大声をあげた。
「リトナジムのジムリーダー、シュウ!?」
スカイ団は急いでシュウと距離を取る。
「…あり?パチリスいなくね?」
シュウはスカイ団をよそに独り言を呟く。しかし、代わりにスカイ団の手に握り締められた銀色のケースを見つけた。思わず声をあげるシュウ。
まさに棚からぼたもちだ。
「てめぇ、一体何の用だ!?」
短気なスカイ団がシュウに食らい付く。
「そのバッジケース返してくんね?それ、オレのダチのもんなんだよ」
しかし冷静なスカイ団はバッジケースをヒラヒラと見せつけて逆にシュウを挑発する。
「返せよ!!」
その挑発にムカッと来たのか、シュウは声を荒げる。
「あなたに私達二人を相手に戦うことができますか?」
思わず押し黙ってしまうシュウ。相手がどれ程強いのかわからない限り戦いは避けたい。
「交渉をしましょう」
実際、戦いを避けたいと思っているのはお互い様だろう。冷静なスカイ団はしっかりバッジケースを持ったままシュウに提案した。
「このバッジケースを返す代わりに、この場を見逃してくれませんか?」
「この場?リトナシティから出て行くならいいぞ」
シュウは不満そうに相手を見やる。
「それはダメですよ。私達は用があってここにいるんですから」
スカイ団も譲ろうとはしない。
「どうせろくな用事じゃないんだろ?ここにいたらオレ達に倒されちまうぜ?」
今度はシュウが挑発するようにスカイ団に言う。きっともう、シュウは自分の身の危険など忘れてしまっているのだろう。それほどスカイ団にイラついたのか。
「でも、今あなたは一人じゃないですか」
「はっ!!んなの一人で十分!!」
その言葉にスカイ団も挑発に乗ってしまったようだ。
「そんなに言うんならやったろうじゃねぇか!!いいだろ、イスミ!?」
短気なスカイ団はもうバトルをする気満々だ。
冷静なスカイ団――イスミも少しキているようで、あっさり許可する。
「いいですよ、ツマブキ。でも私も楽しみたいですから、少し残しておいてくださいよ」
短気なスカイ団―――ツマブキは嫌な笑いを浮かべた。
「んじゃ始めようぜ、ジムリーダーさんよぉ。俺が勝ったらジムバッジくれよ」
「んじゃオレが勝ったら持ってる金、全部渡せよ」
隣で傍聴していたイスミが失笑する。
「誰が渡すか!!行け、ザングース!!」
「行ってこい、ニューラ!!」


地面に残るシュウの臭いを追って、ユウキ達はリトナシティの端へと向かっていた。トワの肩には何故かパチリスも乗っている。
「なんだか街の端の方に向かってるな」
だんだん建物が少なくなって行くのを見ながらユウキが呟く。グラエナはそんなユウキを後目にどんどん街の中心から離れていく。
「シュウさん大丈夫かなぁ?」
心配そうな顔でトワが尋ねる。
「シュウのことだ、きっと大丈夫!!」
ユウキが笑って答える。
ユウキのほうが何十倍も心配なはずなのに、そんな様子も見せない。
(強いな…ユウキは…)
街の中心から大分離れた廃屋の工場の前で、グラエナの歩みが止まった。
「ガゥ!!」
「ここか!!」
簡単に中に入れそうだったが、かなり広い工場だ。すぐにはシュウを見つけられそうにない。
「グラエナ、頼むぞ!!」
グラエナを先頭にユウキ達は工場の中へと侵入した。二階はないようだがその分道が入り組み、ひとつひとつの部屋が大きい。工場は長い間使われていないらしく、まさにお化け屋敷のような状態だった。
そこらじゅうに機械の残骸やらが転がり、床は錆びて今にも抜け落ちそうだ。
「トワ、床が錆びてるから気をつけェ――――!!!?」
バキンッ!!
突如ユウキの下の床が抜けた。「ユウキ!!」
トワは驚いて急いで駆け寄る。グラエナも驚いて振り返った。床からユウキの上半身だけが顔を出して、ユウキは落ちないように腕で踏ん張っていた。
「大丈夫?」
トワとグラエナに手伝ってもらい、ユウキは穴から這上がった。
「っぶなかったァ〜」
ユウキは安堵の息を吐く。
「パチィ…」
そんなユウキを呆れた様子でパチリスが笑った。
『注意した本人が落ちてどうすんの?』と言った感じだ。
「あれは予想外だろ!!」
ユウキがパチリスに言い返す。何を言っているかはわからないが、言いたい事は嫌でもわかった。
「パチリス、そういう事を言っちゃダメ!!」
トワがパチリスを叱りつける。うなだれるパチリスを見てユウキはイイ気味だと笑ってみせる。
その時―――!!
『ズドド―――ン!!』
凄まじい破壊音がこだました。床がグラグラと揺れ、上から金属の破片や何やらが落ちてくる。ユウキはトワをかばうように抱きしめる。しばらくして揺れが収まった。
「ゲホッ、う〜…埃まみれだ」
ユウキは咳き込みながら自分やトワの埃を払う。
「大丈夫か?」
「うん、ありがとう」
トワは笑ってユウキの頭に残っていた埃を払ってあげた。
ユウキも笑い返す。
「グラエナ、大丈夫か!?」
グラエナも力強く唸る。
「パチリスも平気だな」
トワの腕の中からパチリスが元気良く飛び出す。
「どこかで爆発があったんだ。シュウかもしれない」
「奥のほうからだよ!!」
「ガゥ!!」
再び立ち上がると、ユウキ達は走り出した。


「さすがジムリーダー…、と誉めたいところですが、さすがのあなたも二人相手では無理だったようですね」
先の見えない粉塵の中からイスミの声がこだまする。
「ゲホゴホッ、うっせぇ!!勝負はまだまだこれからだ!!」
シュウは咳き込みながら悪態をつく。
しかし、あのツマブキっていうやつのポケモンのだいもんじ…。
あれは本当にまずい。
只でさえ威力が強いのに、シュウが使うのは氷タイプだから相性が悪い。
「良く頑張った、ニューラ」
戦闘不能になってしまったニューラをボールに戻す。
出ているのはルージュラのみ。しかしルージュラもかなりダメージが蓄積されている。相手はザングースとストライク。
一人ずつ来ると思いきや、いきなり二人で来やがった。
しかもかなり強い…!
「頑張れ、トドゼルガ!!」
シュウはトドゼルガを繰り出した。トドゼルガはシュウの最強ポケモンだ。
しかし今、トドゼルガをもってしても勝てるかどうかわからない。
「トドゼルガ、オーロラビーム!!」
凄まじい咆啌と共に、トドゼルガの口からオーロラの光線が発射された。ストライクに直撃するが、ザングースがすぐに上手く反撃してくる。
「元々相性が悪かったんだよ!!この調子じゃクールバッジは楽勝だな!!」
ツマブキが辺りも気にせず高笑いをする。
「これで終りにしてやる!!ザングース、ルージュラにブレイククロー!!」
ザングースがルージュラに向かって走り出した。ザングースの長い爪が力を溜めて光り出す。
「ルージュラ、避けろ!!」
しかしルージュラは傷のせいで避けることが出来ない。
まさに絶体絶命!!
決まった――――…
誰もがそう思った。
しかし、ルージュラは倒れていなかった。立っていた場所より少し離れた所で、いつの間に来たグラエナに助けられていた。ザングースの爪は見事地面に深く突き刺さっている。
誰にも見えない、まさに風のようだった。
「2対1なんて卑怯じゃないか、スカイ団!?」
「なっ…!!」
「お前は…」
スカイ団が声を揃える。
「ユウキっ…!!」
シュウは飛び出してきた人影の名前を叫んだ。
「いつかの生意気なクソガキじゃねぇか!!」
ツマブキがユウキを指差してわめく。ユウキも今頃スカイ団の顔をしっかり見たのか、大声をあげて二人を指差した。
「またお前ら!?どんだけしつこいんだよ!!」
「知り合いなのか、ユウキ!?」
ユウキの反応にシュウは驚きの声をあげる。
「最強に会いたくなかった奴らだ!!」
ユウキは心中で唸る。
「ユウキ!?」
するとタイミング良く、ユウキが出てきた通路から女の子の声が聞こえてきた。
「来るな!!」
しかしユウキの声は間に合わなかった。
「どうしたの!?」
すると、通路からパチリスを連れた女の子が姿を現した。
その姿を見てスカイ団が驚いた声をあげる。トワもスカイ団の面子に気づくと、アッと声をあげた。
「トワ、逃げろッ!!」
立ちすくんでいたトワはユウキの声に我に返ると、元来た通路を急いで逆走していった。
「逃がすかっ!!」
すかさずスカイ団も後を追う。
「待ちやがれ!!」
イスミとツマブキを割くようにオーロラビームが炸裂した。トドゼルガの攻撃が行く手を阻んだのだ。
ツマブキが思わず振り返る。
「まだオレとのバトルが終ってねぇぞ!!」
「ツマブキ、それをお願いします!!」
イスミはツマブキにシュウを委せると、通路の奥へと消えていった。
「ユウキ、ここは委せて早く行け!!」
シュウはユウキに叫ぶ。
「バッジケースも奴が持ってる!…ッ、早く!!」
ユウキは力強くシュウへ頷くと、グラエナと共に通路の奥へと消えていった。残されたシュウとツマブキは互いに睨み合う。
「そんな強気なこと言っちゃっていいのかよ?」
ツマブキはシュウに嫌な笑みを送る。シュウはそれをスルーすると、ルージュラをボールに戻した。そして更に強気な口調でツマブキに告げた。
「オレのトドゼルガを甘く見ない方がいいぞ?」



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10:25
no.2-バッジケースを取り戻せ!!リトナのいたずらリス-前編(2)
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「行け、グラエナ!!」
「行け、ニューラ!!きりさく!!」
ジムの中に白熱した緊張感が満ちる。
誰もがユウキの戦いをじっと見守っていた。
ニューラの繰り出したきりさくが見事グラエナの胴体に命中した。
思わずグラエナは体勢を崩すが持ち堪える。
「シュウ、腕上げたな!?」
「当たり前だ!!ジムリーダーとして年上として、ライバルとして!!いつも敗けっぱなしじゃないぜ!?」
「オレだって!!グラエナ、シャドーボールからかみつく!!」
グラエナは黒い球体を放つ。
素早い動きでニューラはそれをかわす。
「ニューラ、次の攻撃に気をつけろ!!」
しかし遅かった。
ニューラがかわした瞬間、グラエナのかみつくがニューラに直撃した。
地面に倒れ込むニューラ。
観客から熱い歓声があがる。
いつのまにか、トレーナーだけでなく街の人達もバトルを見に来ている。
「あれが最年少殿堂入り者の実力かぁ!!」
「やっぱりすげぇ!!シュウさんが押されてるぞ!!」
「何言ってんの!!シュウさんだって敗けてないわよっ!?」
観客から声援とエールが次々飛び出す。
トワは片隅からユウキを見守っていた。
いつもそうだが、ポケモンバトルをしているユウキはいっそう生き生きしている。
トワはふとユウキが別の人間のように感じられた。
いろんな人達と出会って、たくさんの友達を持って、そしてどんどん自分の世界を広げていくユウキ。

でも、私は――…

「…――――ないッ!!!!」
突然ユウキの悲鳴がこだました。
ハッと我に返るトワ。
どうやらバトルはユウキの勝利で終わったらしい。
しかし何だかジム内の空気がおかしい。
「どうしたの、ユウキ?」
ユウキのただならぬ様子に異変を感じるトワ。
「大変だ、トワ!!バッジケースがないッ!!」
「バッジケースって…ハマザの森で見せてくれた…?」
ハマザの森で、トワはユウキに頼んでユウキのバッジケースを見せてもらったのだ。
銀色の綺麗なフォームの箱。
その中に8つのバッジと、殿堂入りを証明するひときわ輝く大きなバッジ。
「あ、あれを!?」
トワは驚いて飛び上がる。
「いつも肌身離さず持ってたんだ!!何でなくなるんだッ!?」
ユウキは完全にパニック状態だ。
「えぇ!!じゃあチャンピオンバッジ見れないのか!?」
トレーナー達から声があがる。
どうやらトレーナー達にバッジケースをせがまれて、今ないことに気づいたらしい。
「…お前殿堂入りの自覚あるわけ?簡単にバッジケースなくすなよ」
「なくすわけねェだろッ!!あれがなきゃロマボシ山の山頂へ行く許可が下りないんだぞ!?」
「だったらもう一回殿堂入りすりゃいいじゃん。お前ならあっというまにできるだろ?」
サラッとすごいことを言ってのけるシュウ。
思わず周りのトレーナー達がシュウを驚いた目で見る。
「こっちはその時間だって惜しいの!!トワだって早く行きたいと思ってるだろうし」
その時、キレ気味のユウキをなだめるようにトワがユウキの肩に手を置いた。
「私は別に構わないよ?そっちのほうがもっとユウキ達と一緒にいられるし」
グラエナとユキメノコもコクコクと頷く。ユウキはお陰で頭が冷えたようだ。しかし、まだ眉間に寄ったしわがとれない。
「…でもさァ」
トワは優しい眼差しでユウキの頭を撫でる。
「そうだね、頑張って集めたバッジだもんね。早く見つけに行こう?」
「トワ…」
グラエナとユキメノコも励ますようにユウキを小突く。思わずユウキは涙ぐむ。
「か〜っ、妬けるねっ!!カノジョじゃないとか言って充分ラブラブじゃねぇか!!」
シュウが眉を寄せてトレーナー達に吐き捨てる。
「まあまあ」
トレーナー達はシュウをなだめる。
「でも、どこでなくしたのかオレわかんないぞ…?」
確かに一番重要なことがわかっていない。
「そうだよなぁ。とにかく手当たり次第に…」
しかしユウキとシュウの会話にトワが即座に答えた。
「持っていったのはあのパチリスだよ」
驚いてトワを見るユウキ。
「何で?」
「あの時なんかあの子様子がおかしかったし、何か持っていったような感じだったもん」
「気づかなかった…」
ユウキは驚きの混じったため息を吐く。
「よし、そうと決まれば…!!」
シュウは持ち前のリーダーシップを使い、周りに指示を出す。
「街とハマザの森、二手に分かれて探そう!!トワちゃんはオレと―――…」
「トワ、行こう!!」
「うん!!」
ユウキに手を引かれ、トワは嬉しそうにジムを出ていった。
「邪魔しないで俺達と探しましょう!!」
無視されてイジけるシュウをトレーナー達が必死になぐさめていた。


所変わって、ここはリトナシティの裏路地――…
「あのクソガキ、思い出しただけでムカムカしやがる…!!」
暗く狭い路地に男の声が響く。かなり機嫌が悪いようだ。
「…あの少年、一体何者だったんでしょうか…」
もうひとりの方はいたって冷静だ。
全身白ずくめに、胸には青い大きな『S』の文字。
男達の正体は、トワを追っているスカイ団だった。
彼らはまだトワを諦めていないらしい。
「何者かなんて関係ねぇんだよっ!!あのガキ、最後の最後に変なことしやがって…!!」
短気なスカイ団が道の端に、ペッと唾を吐き出す。
冷静なスカイ団がそれを見て心底嫌そうな顔をした。
「汚いことするな」
短気なスカイ団を睨みつけ、そのまま問題の場面の状況解説へと移る。
「…確かにあのだいもんじのはね返し方は妙でした。それに、あの場にいたのはグラエナとレベルの低いゴースだけ。まもるとミラーコートができるポケモンなんていなかったはず…」
「ってことは…?」
短気なスカイ団が意味深長な視線を送る。冷静なスカイ団はそれに答えるように不気味な笑みを浮かべた。
「どうやら、そのようです…」
短気なスカイ団もニタリと露骨な笑みを見せ、気合いを入れ直す。
「んじゃ、さっさと―――ぐはぁッ!!」
気合いを入れ直した途端、突然彼が奇声を上げた。
「今度は何だ…?」
冷静なスカイ団が少しキレ気味に尋ねる。短気なスカイ団は腹を抱えて膝をついていた。
「こ…これが…腹に…」
苦しそうに出してきた右手には、白くて青いものがぶら下がっている。
「これは―――…」


さすがのユウキも疲れ果てて、近くにあったベンチに座り込んだ。グラエナもベンチの隣でぐで〜っとなる。
「見つかんねェ…」
ユウキは息を切らしながら悪態をつく。後ろにある噴水の水しぶきが気持ち良い。お昼も過ぎ、遊具で遊んでいた子供達が続々と家に帰っていく。
ジムを出て約一時間。
走り回ってパチリスを探したが、全く見つからない。
グラエナに匂いを追わせようとしても地面には匂いが見つからなかったし、人に尋ねても情報はなかった。わかったのは、あのパチリスが常にイタズラをして街の人達を困らしているということだけ。
「トワ、遅いな…」
空を見上げながら、ユウキはポツリと呟いた。
トワは近くの出店までご飯を買いに行ってくれている。
もしものためにユキメノコも一緒に行かせたので、危険な目に遭ったりはしないだろう。
「ユウキ!!」
「トワ、こっちこっち!!」
公園の入口にトワとユキメノコが袋片手に現れた。
ユウキは反射的に立ち上がって手を振る。袋を持ったまま、ユキメノコがいつものようにグラエナに飛びついた。
「ユキメノコ!!ご飯ご飯!!」
ユキメノコの持った袋が、中身が飛び出さんばかりに大きく揺れる。慌ててユウキはユキメノコから袋を取り上げた。
安堵の息を吐いてユウキはベンチに腰かける。
「ごめんね、遅くなっちゃった!」
トワが少し息を切らしながら、ユウキの隣に腰かける。
「おかえり、どうした?」
ユウキは中に入っていたサンドイッチを美味しそうに頬張りながら、トワを見る。
トワは少し困ったような顔をした。
「?」
「それが―――…」


「本当か、その話!!?」
「シュ、シュウさん!!」
トレーナーはシュウと通行人の中年オヤジを引き離した。中年オヤジは激しく咳き込む。
シュウは興奮を押さえきれないようで、どんどん中年オヤジに質問を投げつける。
「で、そのパチリスは!?連れてった奴らは!?」
「まさかシュウさん、あんた追いかける気じゃ――…!?」
中年オヤジは驚いて逆にシュウに尋ねる。
「当たり前だ。親友が困ってるんだからな」
シュウは動じもせずに告げる。
「とんでもない!!さっき言ったろ!?あいつらスカイ団だ!!」
中年オヤジは必死な形相だ。
「そうですよ!!自分以外は皆他を探しに行っています。自分がユウキさんに伝えに行けば、シュウさんがスカイ団2人を相手にしなくちゃいけないんですよっ!?」
いくらジムリーダーでも、実力未数値なスカイ団2人を相手にするのは危険過ぎる。
「だからってぐだぐだとユウキを待ってられっか!!オヤジ、早く場所教えろ!!」
シュウは中年オヤジの襟首をぐいっと引っ張り上げて怒鳴る。
「リトナデパートビルの裏路地で見た!!けど、パチリスをまだ持ってるかは――――」
「わかった。悪かったな、オッサン!!」
シュウはリトナデパートに向けて駆け出した。
「シュウさん!!」
「お前はユウキと皆に伝えろ!!オレはスカイ団を追う!!」
トレーナーはしばらく小さくなっていくシュウを見守っていたが、ハッと我に返ると急いで街の中心へと走っていった。


「―――ってわけなの」
トワは一通り説明し終わると一息ついた。
「なるほど…」
ユウキは腕を組んで黙って聞いていた。
「簡単に言うと、ご飯を買いに行って何故かパチリスを見つけた…ってことか」
トワはコクリと頷く。
「…で、トワに連れて来られたわけだ」
ユウキはトワの膝にゆっくり視線を移した。
少し眉間が痙攣している。
トワの膝に乗っている白くて青い小さな物体…。
紛れもなくユウキ達が探していたパチリスだ。
パチリスはユウキのことなどお構い無しにせっせと毛づくろいをしている。
「ユ、ユウキ…」
トワはユウキを抑えようとしたが駄目だった。
「おいッ!!!!」
ユウキはトワの膝からパチリスをガシッと掴み上げた。パチリスは何事かと目を丸くしてユウキを見る。
「オレのバッジケースどこにやったんだよ!!」
「落ち着いて、ユウキ!!」
ぶんぶんとパチリスを振るユウキを、トワは必死になだめる。
そして案の定、パチリスがまたしてもユウキの指に噛みついた。ユウキの悲鳴が公園内にこだまする。
手が緩んだその隙に、パチリスは急いでトワの胸へと抱きついた。
「あ!!トワのところに逃げたってそうはいかねェぞ!!」
傷は浅かったようで、噛まれた指を舐めながらユウキがパチリスを睨む。
どうもパチリスが抱きついている場所が気にいらない。トワは全く気にしていない様子だが。
ユウキはパチリスの首ねっこを掴むと、力づくでトワから引き剥がした。
「出さなきゃならないものは、しっかり出してもらうからな」
そしてユウキはパチリスに右手を突き出した。
しかしパチリスはその手とユウキを交互に見つめるばかり。
時々トワに視線を向けるが、バッジケースを渡す素振りを見せない。
「あのね、ユウキ…」
トワが深刻な様子でユウキに話しかける。
ユウキは一旦パチリスからトワに目線を移す。
「落ち着いて聞いてね」
ユウキはトワの様子につられてゴクリと生唾を呑む。
「パチリスはバッジケースを持ってないの」
トワの思いがけない言葉。
ユウキは一瞬我を忘れて固まった。
「パ、パチリスが…どこかに隠したんだろ?」
少し動揺しているようだ。
しかしトワはそんなユウキをしりめに更に続ける。
「違うの!!それが、奪い取られたみたいで…!!」
ユウキはもう冷や汗ダラダラだ。
「だ、誰に…?」
「あのスカイ団に!!」
その時―――
「ユウキさ〜ん!!トワさ〜ん!!」
遠くから男の人の呼ぶ声が聞こえてきた。
ユウキとトワは声のした公園の入り口に顔を向ける。
「あ!!」
あのユウキと親しそうだったトレーナーだ。
手をブンブンと振りながら、全速力でこちらに走ってくる。
「…いい大人が慌て過ぎじゃね?」
ユウキはトワと互いに顔を見合わせると、若干引き気味に呟いた。



(3)へ続く⇒

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