三国無双短編集

□きっかけ[U-18]
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 この気持ちに気づくきっかけは突然訪れた。
 呉軍は次の戦への作戦会議を日々行っていた。今日もまたその為に提携を結んでいる蜀の人達が来る予定だ。
 定時になっても周瑜が部屋に来ないので、孫策は周瑜の部屋まで見に行く事にした。
「周瑜入るぞ」
 扉を開け、中に入った。
「周瑜、もうすぐ蜀の軍師が来る。早く部屋へ…」
 椅子に座っている周瑜を見つけ、孫策はそう言いながら近づいた。
「おい、聞いてんのか?」
 反応がないのですぐ近くまで行って、顔を覗き込だ孫策の目に映ったのは周瑜の寝顔。
「寝てんのか」
 日頃忙しくしてるから疲れているのはわかるけど、
「客来るのわかってて普通寝るか?」
 周瑜の寝顔を見て孫策は呟いた。起こそうと思って近づいてはみたものの、その寝顔があまりにも綺麗だったので、思わず顔に触れていた。
「何やってんだ俺は…」
 ふと我に返り手を引くと、孫策は気を落ち着かせた。
「ん…。孫策?どうした?」
 さて、今度こそ起こさないとと孫策が意気込んだ時、周瑜が目を覚ました。
「どうしたじゃねーよ。もうすぐ蜀の軍師が来るんだろ?お前が来ないから迎えに来たんだよ」
「ああ、そうだったな。悪い、今行く」
 周瑜はまだ眠そうな顔で立ち上がると部屋を出て行った。
 打ち合わせをする部屋に向かう途中で周瑜は足を止めた。そして自分の顔を触った。それは先程、孫策が触れたところ…
 周瑜はふぅとため息をつくと再び歩きだした。
 蜀との打ち合わせを終えると周瑜は他の仕事の為に、部屋に残った。
「まだ仕事してるのか?」
「ああ」
 入ってきた孫策に周瑜は書類に目を落としたまま答えた。
 孫策は周瑜の隣に何も言わず座った。
 紙の擦れる音だけが部屋に響きわたること数十分、
「なあ周瑜」
 孫策が口を開いた。
「なんだ?」
 周瑜は手を止めると孫策の方に振り返った。
 その後の事は一瞬の出来事だった。
「なっ、何をする!」
 ガタンと椅子が倒れる音と周瑜の声が室内に響いた。
 手で口を覆うようにして立つ周瑜を孫策は面白そうな顔で見上げた。
「いや、なんとなく」
 孫策はそう言いながら周瑜の手をつかんだ。そしてその手から逃れようともがく周瑜を 力ずくで引き寄せると、また口づけをした。
「ん…」
 誰かが部屋に近づいている事にも気付かずに。
「孫策様ー。どこにいらっしゃるのですかー?」
 大喬は廊下をウロウロしていた。
「あ、お姉ちゃんどうしたの?」
 そんな大喬に小喬が声をかけた。
「あ、小喬。孫策様見なかった?」
「見てないよ」
「そう、どこにいるのかしら」
 大喬は困ったように俯いた。
「私も一緒に探すよ、お姉ちゃん」
 困っている姉を助けようと小喬が切り出した。
「ありがとう。小喬」
「じゃあ、私庭の方探すね」
 そう言って小喬は廊下を走って行った。
 今いる廊下を曲がって少し行った所で大喬は大きな音を聞いた。何だろうと思い、音が した部屋に行った。そして扉が少し開いていたので中を覗いた。
「!」
 そこには、今まで探していた人物が居たには居たのだか、どういう事なのか、周瑜と口 づけしているではないか。
 思わず立ち去ろうとした時、扉がカタンと揺れた。
 その音に、部屋の中にいた二人が廊下の大喬の姿に気づいた。
「あ、あの。すみません!」
 大喬は逃げるようにその場を立ち去った。
「あ、おい!大喬!」
 呼び止めも空しく、大喬は走り去って行った。
「まずいなー」
 孫策はため息をつくと、荒々しく息をしている周瑜を見た。
「続きはまた今度な」
 そう言うと孫策は足早に部屋を出て行った。
 残された周瑜は崩れ落ちるように椅子に座った。まだ感触が残る唇に触れてみて、頭を抱えるようにうなだれた。残っていた仕事に手がつくわけもなく、周瑜は自室に戻った。

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