三国無双短編集

□風邪の直し方[U-18]
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 朝から確かに体がだるかった。
 だけど、動けないほどでもなかったのでそのまま執務に向かった。
 そしていつものように一日が過ぎる、
 …はずだった。
「大丈夫か?」
 急に声をかけられ、周瑜は振り向いた。
「孫策か。…別に問題はない」
「そうか?辛そうに見えるぜ?」
 孫策がすぐ近くまで来て、顔を覗き込んでくる。
「熱もあるみてーだし」
 身じろぐように、逸らした顔が捕らえられ額に手をあてられた。
「大丈夫だと言っているだろ」
 その手を振り払い、踵を返したその時景色が揺らいだ。
「ったく、どこが大丈夫なんだよ」
 崩れ落ちそうになった体が支えられると同時に、溜息交じりの言葉が降りかかる。
「今日はもう休め」
「それは命令か?」
 ちょっと挑むようにそう言ってみれば、孫策がまた溜息をついた。
「どーせ違うと言えば聞かねーつもりだろ?」
 違いない、と周瑜は少し笑った。
 一言でも「命令じゃない」と孫策が言えば、何か言い返そうと考えていたから。
「…わかったよ」
 そう呟くと、周瑜は素直に自室に戻った。
「ちゃんと医者に診てもらえよ」
 去り際、かけられた言葉に軽く手を上げ了解の意を現す。

 全くお節介な奴だと思いつつも、彼が呼んだであろう医者に診察を受け、周瑜は寝台に横になった。
 それから程なくして、部屋に孫策が訪れた。
「医者はなんだって?」
 そう聞きながら、孫策は周瑜の額に触れた。
「ただの風邪だ。心配ない」
 孫策の手から逃れるように、周瑜は孫策に背を向ける形で寝返りをうった。
「…そうか」
 背を向けた周瑜の髪に手をやりながら孫策は呟いた。
「それで、いつまで居るつもりだ?」
 一向に出ていこうとしない孫策に背を向けたまま周瑜は問いかけた。
「なんだ?俺がいたら眠れないか?」
「わかっているなら、早く出ていってくれ」
 冷たくあしらうような言い方をすれば、がたっと椅子の動く音がした。
 出ていくのかなと思った次の瞬間、首筋をすぅっと撫でられ息を呑んだ。
 文句を言ってやろうと口を開きかけた時には、孫策は寝台に上がっていて…
「なあ周瑜。風邪ひいた時は汗かくのがいいんだよな?」
「なにいっ…」
 含み笑いの孫策に、熱に侵された体では敵うはずもなく抵抗することもできず唇を奪われた。

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