双子珠の様であれ

□第1巻-1章 「悪霊がいっぱい!?」
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視線を麻衣に向ければ、無意識に握り拳を作っている。(渋谷さんや皆はこちらを見ていないから、気付いてないけど)

「こんなトコで何してるんですか」

「ちょっと用事があって」

「じゃあ、それをすれば」

「なら、あたしたちは帰りましょうか。渋谷さんのお邪魔になるといけないし」
「「「えーーーっ」」」

視聴覚室に響くブーイングの声。(思わず耳を塞いでしまった)

「まったく!
二人の事気にしないでくださいね。あっ、用事ってなんですか?あたし達も手伝いまーす」

「いや、テープのダビングだから。また、怪談する時に混ぜてもらえるかな」

「じゃ、明日の放課後!どうですか?」

「いいよ。どこで?」

「あたし達の教室!一-Fです!」

そう話したのを最後に、皆は視聴覚室を出た。
最後に残っていた私はちらりと後ろを振り返る。
そこに居るのは渋谷さんだけだった。




―――翌日

「んー、いーい天気だなぁ」

「早めに出て来て正解だったね。こんな綺麗な桜が見放題なんだもの」

ふと麻衣を見ると、彼女の視線の先には現在工事がストップしている旧校舎があった。
顔を少し覗き込むと、なんだか青褪めている気がする。

「どうした

「あ、あのね、ミチルがこの旧校舎は祟られてるって…」

「そういえばそんな噂、聞いた事がある様な…」

「…うーん」

「入りたいの?」

「いや、別にそんな訳じゃ!!」

予想以上のの慌てっぷりだ。

「でも、気になっては居るんでしょう」

「うー…実は」

「…入っちゃう?」

「えぇ!!」

「いいじゃない。麻衣も気になるんでしょう?
このままじゃ、授業に集中出来なさそうだし」

クスクスと笑って言うと麻衣は照れた様な罰が悪そうな顔で返事をした。

と、いう事で「外から覗くだけ」という条件付きで、旧校舎に近づく。
この旧校舎は戦前から建っているらしく、酷く危なげに見えた。
そういえば、以前通り過ぎた時よりも窓の位置が下がっている様な。遠目で見たからそんな気がするだけだろうか?

「……何あれ?」

ふいに麻衣が呟いた。

「何が?」

「あれ」

そう言って指差す先には、カメラのような物が在った。
小さなハンディタイプではなく、ドラマなんかを撮影するのに使いそうな。

「…ん―――、ん〜〜〜っ!」

うずうずと擬音が付きそうな感じで麻衣が唸っている。
そして、

ギィィーーーーッ

とうとう扉を開けてしまった。

「って、こら、麻衣!外から覗くだけって、言ったでしょ!」

「だって、気になるんだもーん」

そんな返事に私は思わず、溜め息をついてしまった。(いや、麻衣の性格なら中に入りたがるだろうなぁ…とは思ったけどね)
扉を開けたは良いが麻衣は、やはり怖いのだろう。
私を盾にするかの様に腕にしがみ付きてくる。
内心、そんな行動に苦笑しつつもゆっくりと足を進めた。

「あー、やっぱりカメラだ」

「みたいね…」

見れば見るほど不自然だ。
「旧校舎を撮影現場に使う」だとか、
「この近くでドラマや映画の撮影をしているから、旧校舎を機材置き場としてを貸している」
なんて話しは聞いた事がない。もしそうだとしてもこんな所にカメラだけ放置はないだろう。

「えーーーっ、何これぇ。落とし物…、な訳ないしなぁ」

あれやこれやと考えていたら、麻衣はカメラを物珍しそうに眺めながらチョンッチョンッと触っている。

「――誰だ!?」

「――あっ、すいませんっ。別にあのっ…」

隣で麻衣は私以上に驚い

パニックに陥っている麻衣を落ち着かせようと思い、彼女の方に振り向くと後ろにある木製の靴棚が麻衣に向かって倒れていくのが見えた。


ガッ

 
派手な音が、


辺りに


響いた。



   
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