novel?

□angel
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眠る君を見ている。
僕の隣りで眠る君を・・・。


【angel】


目を覚ますと、隣りに温もりを感じた。
君が、手塚が安心しきった顔で眠っている。

いつもの堅苦しい様子は微塵も感じさせない、無垢で、透明な君がそこにいる。
僕の腕の中に。

眼鏡を外した君の顔は、どんな芸術家でも現せないだろう、という程に綺麗で、僕は思わず眩しいものを見る時のように目を細めた。

でも、僕の心を深く、静かに揺るがしたのはその造作だけじゃない。

君が隣りにいてくれること、僕の前でだけ、本当の君をさらけ出してくれること、不安など何も無い、というように、眠る君自身が、何よりも僕の心に染み入っていく。


自分の中に、こんなにも人を愛しい、と思える感情があったなんて・・・君に出逢うまでは考えもつかなかった。
一目見て、君は僕の運命の人だと理解したけれど、君が同じ想いを僕に抱いてくれるだなんて、そんな大それたことは、思いもしなかった。


そんな君が、隣りに眠っている。
2月28日から、僕と熱い夜を過ごしたその翌朝。

純白のシーツの中で微睡む君の首筋には、昨晩のことが嘘でなかったことを示す赤い刻印が覗く。
さらさらとした髪が君の額に落ちてきた。
それを整えながら、この一時を得ることが出来た自分の幸運に、手塚が僕の隣りにいてくれる奇跡に、訳も無く涙が零れた。
悲しくて泣いている訳じゃない。
ただ愛しくて・・・。

静かに君の頬に零れ落ちた僕の涙を拭うと、もぞりと、君が躰を揺らした。

朝日がカーテンの隙間から、照らし出すべき君を映す。
キラキラと輝いているような君と、その心。

君がゆっくりと、動きだそうとしたその動作に合わせ、肩までかかっていたシーツが背を滑る。


えっ、手塚・・・その背中のものは・・・、羽?

光を纏う君の背に一瞬、この世の何よりも白く優しい色あいの羽が見えたような気がしたけど・・・、瞼を擦っている間にそれは見えなくなってしまった。

君の背に羽が見えた、なんて、本人に告げたら笑われてしまいそうだ。

でも、本当に、僕のために現れた天使だったりして・・・。



綺麗な綺麗な顔を僕の瞳に映し、瞼を開こうとする君。
ゆっくりと長い睫が震え、その奥の瞳が僕を捕らえた。
とろけそうになるくらい、甘く優しく微笑む君の艶やかな唇が空気を震わす・・・。


「・・・不二、誕生日・・・・・・」





END

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