novel?
□eyes
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過去にしないで。
俺のことを見て。
今、あなたの前にいる俺を。
あの頃に戻れるなら。
あなたの瞳に、耳に、「心」に、俺が居られた時間に。
【eyes】
絡み合っていた視線が、急速に熱を失っていく。
瞳の中に俺は確かに映っているのに、あなたとその器官を通して交わることはない。
ただ、ガラス玉のような、それでも美しいあなたの瞳の中から今にも排斥されそうな俺自身と目が合うだけ。
兆候はあったのだ。
見詰める先で蕾が綻ぶように笑っていたあなたが、いつしか造花のように色を変えることを拒むようになった時。
俺といる時は、少しだけ饒舌になっていたその唇それ自身が、生きることを放棄するように固く閉ざされたままになった時。
そして何より、
その瞳に「俺」を映さなくなった時。
あなたが変わって行くのを、間近で見ていた俺はとうの昔に気付いていたんだ。
でも受け入れられなかった。それを受け入れること、それはすなわち、俺があなたの世界から閉め出されることを意味しているのだから・・・。
あなたの瞳に俺が映ることが無くなったのに気付いているのに、離れられない。
内に入ることが出来ない苦しさを抱えていても、今はまだ傍らに立つことを許されているのなら、俺はそれに縋っていたい。
もう後戻り出来ない所まで来ている。
あなたが居なければ、立つことが出来ない。
呼吸の仕方さえ本能から閉め出されて、生への執着が霧散していく。
生きていくことを諦めさせないで。
ただ、あなたの側にいられるのならば、多くを望んだりしないから。
瞳の中にある俺の居場所が無くなるのは時間の問題なのだろうか。
それでも変わらず、あなたを構成する冷たくなった全てのパーツ、残らずアイシテいるよ。
閉め出された瞬間に、目的を失った俺の「脳-(心)-」は活動を停止する。
あなたを知り得ない、「意味」を失った俺になる。
その時まで、ワガママを許して。
全てをかけて、アイシテいるから・・・。
END