novel?
□face2face
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離れていくなんて耐えられない。
何でもいい、側にいて・・・。
【face2face】
一体何を恐れているのだろう。
捕らわれること?
変わること?
それとも、
「離れていくこと」?
あの熱い目が好きだ。
俺を射抜くような、それでいて包み込むような優しさをたたえた瞳が。
その瞳を覗いて、そこに今までに見たことがないような表情をした自分を見つけた時は、こんな幸せがこの世にあったのかと、涙が出る程の幸福感を味わった。
でも今は、それを失うのが怖くて。
自分の思いが、彼の小さなカラダには受け止められないくらい大きくなっていることを自覚している。
愛している。いや、もう愛だなんて言える代物ではない。
お前無しの日々など考えられない。そこまで来てしまっている。
だから俺はわざとお前から距離をとるんだ。
お前は手に入らないと思うものを追い掛けたがるから、高い壁ほど乗り越えてみせる、と必死になるから。
お前の興味が俺から離れていかないように、もがいているのは俺なんだ、越前。
手に入った時からお前の視線の先に、俺以外の誰かが写ることがあるだなんて、耐えられない。
お前を、失いたく、ない。
今日もお前の視線は俺を追い続けている。
お前の興味が俺から反れないように、お前に関心の無いふりを装い続ける。
こんなことでしか、お前の心を確認出来ないから。
どれほど「今」この時に、愛している、と囁いても、人とは移ろいやすいものなのだ。
俺の心は、二度と変わることは無いのだと確信を持って言えるが、お前はそうではないだろう?
確かに「今」は俺を求めているが明日のことは分からない。
この不安は、胸につかえる思いは、お前を信じきれない自分の弱さが原因なのだ。
今日も俺の内に、お前が入る隙は無いのだ、という顔をする。
そして必死になるお前を見て、安心している。
「まだ」お前は俺の側を離れていかないのだ、と。
暗い暗いこの喜びを、誰が知り得ようか。
漆黒の中に身を置き過ぎて狂ってしまったのかもしれない。
それでも、戻ることは出来ない。
一人で立つことは、もう不可能なのだから・・・。
せめて、その時が一秒でも先であるように祈るだけ。
今日も、お前の側にいるために、傷つけ続けるのだろうか・・・。
お前を?それとも・・・俺自身を?
END