novel?

□star light night
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越前・・・あの、ちょっと貸してくれないだろうか・・・〃


えっ!?ナニを!?




【star light night】



「あとは、あれだけなのだが・・・。」

10月の某日、手塚家の長男は頭を抱えていた。
何しろハロウィーン間近だというのに、手塚にはアレがいないのだ。
アレがいなければ完成とは言えない、それどころか、出席も危ぶまれるかもしれない。これは由々しき事態である。

思わぬ展開に焦り、眉間に皺を寄せていると、楽しそうに近寄って来た彩菜が声をかけてきた。

「あら、国光。あなたまだ見つかってないの?もう明日は本番じゃない、困ったわねぇ。
だから、越前君に頼めばって言ってるのに。」
「それは・・・」
「越前君なら良さそうよ。彼ならいいモノ持ってそうだし☆母さん彼には期待してるのよねぇ。彼に決めちゃいなさいな☆」
「でも・・・」
「男の子なら決断力は重要よ!!国光、覚悟を決めなさいな!!」
「・・・はい」
「そうそう、解ればいいのよ。『今年も楽しみにしてます』って言われちゃってるしね☆
部活も引退したことだし、部長の威厳とかは気にしなくても大丈夫でしょ。
さぁ、早く電話しちゃいなさいな。お家に伺うなら丁寧にね。こんなこともあろうかと、菓子折も準備済みよ☆」
「・・・(涙目)」



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母親が嬉しそうに渡してくれた菓子折を持ち、越前の家に向かった手塚は、越前家のベルの前で先程から赤くなったり青くなったりと忙しい。
自分が後輩の自宅に赴き、頼み事をするなんて、とプライドが邪魔をしているのだ。だいたい理由を聞かれたら何と答えればいいのか・・・。


しかし、こんな所でいつまでも立ち尽くしている訳にはいかない。手塚が覚悟を決めて、ベルに手をかけたその時、・・・中側から引き戸が開いた。

部屋の窓越しに手塚の姿を目敏く見つけたリョーマは、手塚が入ってくるのを今か今かと待っていたのだが、10分たっても一向に動く気配の無い手塚に焦れたようで、自ら門戸を開いたらしい。


「部長、いつまで可愛いことやってるの?俺もう待ちきれなくなっちゃったっスよ。」

「え・えちぜん、見て・・・。」

「俺が部長に気付かない訳ないっしょ。
ねぇ、部長が自分から来てくれるなんて初めてだよね。どうしたの?
俺に会いたくなったとか?」
本人は、口元を歪ませる普段の人をおちょくったような笑みを浮かべているつもりなのだろうが、それを嬉しくて堪らないという風に輝く目元が裏切っている。
越前に尻尾があれば、今猛烈に振られていたことだろう。

「そ・そんなんじゃないんだが。
その・・・。」

「そんなに顔振らなくてもいいじゃん。
俺、あんたの彼氏でしょうが。不自然なことも無いと思うんだけどねぇ。
まぁ、照れてるからってことにしておいてあげる。
あがりなよ。」

そう言って、越前は年下ならざるリードで手塚を家と招き入れたのだった。





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