novel?

□裏の裏の裏は裏
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中世騎士が活躍していた時代。
動乱が日常的に起きていたこの時代の中で、その国は比較的穏やかな平和を手に入れていた。
舞台は、そんな一国の姫が魔女の呪いを受け、糸巻きに指を刺し、長い眠りに着いた頃。
隣国の王子が、姫を救うため茨に覆われた城を目指すことになった時のお話。


【裏の裏の裏は裏】


「隣国の姫っていやぁ、生まれたその次の瞬間に呪いを受けたってな。何でもそれを不憫に思ってお前達が唯一無二の美しさを与えたって話しじゃねーか。
その話、嘘は無いんだろうな?」

こちらは隣国氷帝王国の王子、跡部その人である。
決断力と思い切った実行力は臣下達の度肝を常に良い意味で抜いてきており、キツイ言動とは裏腹に仲間を決して見捨てることなく、市政を豊かにしてきたことから、国民に高い人気を誇っている。

そんな王子が今回腰をあげたのは、青春王国の姫の呪いが発動し、王国が丸ごと眠りについた、と語った妖精達の言葉があったからだ。

ここ数年、青春王国とは良好な関係を保っているとは言い難かったのだが、妖精達にすがるような目を向けられ助けに向かうことを了承してしまった。言動とは裏腹に、人情に厚い王子なのである。
「ったく、美人でもなきゃやってられないぜ。それは確かなんだろ?」

跡部の吐き出した何気無い一言に妖精達の動きが止まる。
知り合ってから、面倒なことを押し付けられ、挙げ句に妖精達のこの態度。何かを隠しているのは明白だった。

「何か隠してやがるな。俺様はインサイトが得意なんだぜ。早く吐いちまいなっ。
まぁ、どうせ美女っていう程のものでも無いってことだろ?俺様はそんなことくらいで気が変わるような小さい男じゃねぇ。安心しなっ。」

「とんでもないっ!!姫はそりゃあもう美人だにゃ!!」
「嘘なんて付く訳ねーだろうが、跡部!!疑うなんて激ダサだぜっ。」
「跡部さん、いい加減なこと言わないでくれない?俺がそこらの女を綺麗だ、なんて言う訳無いじゃん。」

個性的な妖精・・・達が矢継ぎ早に答える。妖精とは何だったか、と思わず定義を問いたくなった跡部には、何の非も無いだろう。

その妖精達は、跡部に向かって身を乗り出さんばかりに訴えかけた。
存在自体に胡散臭さ丸出しだが、その真剣な様子に嘘は無いようだ。

「じゃあ何が問題なんだよっ。俺様が向かってやってんだ。何の問題も無いだろうが。」
「それが・・・にゃ・・・。」
「事実には色々裏があるっていうかよ。」
「ねぇ?」

「はっきり言いやがれ!!余計に気になるだろうがっ!!」


流石の跡部も煮え切らない妖精達の様子にしびれを切らしたようだ。
美しい姫と呪われた城、まさにおとぎ話と言わんばかりのこの状況で、何のために嘘をつく必要があるというのか。


「怒らないで聞いてよね、跡部!!実は、俺達姫に美しさなんて与えてないんだにゃ!!」

「それに、別に姫は眠りに付いてる訳でもなくてよ・・・。」

「ってか、魔女の執拗さがちょっと尋常じゃなくなっちゃってさ。
あんたに説得を頼みたい、って状況な訳。」
「あーん?じゃあ、美しさとか国がピンチとか全部嘘なのかよ!!」


思わず跡部の頭には「騙されたのか」の文字が浮かぶ。己は何のためにこんな場所に来たのだろうか、と。

「美人なのも国がピンチなのも本当なんだよ!!」
「ただ、俺達が美しさを与えたってのと」
「呪われて眠ってるってのが嘘なだけっスよ、跡部さん。
だってさぁ・・・」

妖精達が顔を見合わせ、声を揃えた。
「「「美しさなんて与える必要無かったん(だもん)(だぜ)(スよ)!!!!

「はぁ?」
「最初からこの世のものとも思えない、薔薇色の誰もが口づけしたくなる魅惑の唇持ってたし・・・」
「雪かとみまごうほどの白い透き通った、吸い付くような手触りの肌だったしよ・・・」
「吸い込まれそうな黒曜石の瞳で・・・〃
あげられるもんなんか無いじゃないっスか〃
しかも(美味しそうだったし)」

「おっチビ、やっぱり姫狙いだったんだなぁー!!」
「菊丸・・・まさかお前もかよっ。悪いけど俺だってここは譲れねぇぜ!!」
「・・・やっぱり、二人ともライバルだったって訳っスね。俺が、って意見に耳を貸さない訳だ。」
「いーや、もとはと言えばお前がっ」
「姫は渡さないにゃ」
「俺がもらい受けるに決まってるっしょ。」


「あぁー、もうお前ら黙れっ!!話の収集が付かなくなるだろうがっ!!」

「あっ」
「跡部・・・」
「忘れてたにゃ」

「その話を総合すると、姫が美しい確率120%だな。
で、不二の行動はデータ通りだったが、皆自分の欲望に忠実過ぎて被害が拡大した確率100%。」

突然聞こえた新たな存在の声に皆が身構える。

「てめぇ、どこから話してやがるっ。姿を見せやがれっ。」

跡部が抜刀し、妖精達にも緊張が走る。姿は見えない。では、どこに
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