novel?

□mix color
1ページ/2ページ

あぁ、もう。
何だってこんな性悪になっちゃったんだか。



【mix color】


最近のこの人、そうつまり手塚は何を言ったって、右から左。
むしろ、俺の反応を見て楽しんでる節があると思う。

四天宝寺中学からの招待合宿。そもそも四天宝寺と連絡を取り合う程に仲が良いなんて、と少し恨めしそうに聞いて見れば簡単に返答は返ってきた。
内容は大問題であった訳なのだが・・・。

「あぁ、昨年、大石と偵察に行った全国大会の会場で、白石に告白されてな。それ以後、連絡が来るようになったな。」

そ、そんなのは聞いてない、というか、データ外の展開だ。

「わざわざお前に言う程のことも無いだろ。
別によくあることだしな。」

・・・。これだから、異様にもてる手塚を一人にしておくのは危険なのだ。
『テニス』と聞けば、大抵危機意識がごそっと抜け落ちて、自覚無しにほいほい付いて行ってしまう節がこの人にはある。
今回は、気を抜いていた俺の失態なのだろう・・・か。

そんな出発前のやり取りを思い出しながらも、ストッパーがすぐ外れる(もしくは、緩い)手塚が皆と宿に泊まる(それも大部屋に!)ことには渋々了承したけれど(ここがそもそも甘かった)、寝間着が浴衣だなんて許した覚えはない。

珍しく手塚狂の不二が文句も言わずに大部屋宿泊を許し、かつ、宿にもケチを付けなかったのは、白石と結託していたからか・・・。
恐るべし、天才&聖書!!浴衣着用宿の見返りは、手塚の生写真である確率94%(残りの6%は動画の可能性)

そんな俺の思いを知ってか知らずか、手塚は浴衣のまま部員へ集合をかけ、廊下を練り歩く。
部屋に戻れば、比嘉中の奴等(特に木手は要注意だ)は、勝手に手塚の布団に潜り込んでいた訳だし。
あまつさえ、因縁を付けて手塚に枕投げを挑んでくる始末。手塚が投げた枕が鼻に当たったから鼻血が出たとは言わせないぞ、木手。(何しろ手塚は浴衣姿だった)

その後も大風呂に浸かりたかった(風呂は手塚だけ部屋風呂に押し込んでいた)、という手塚を何とか宥め、俺の見張る中で入らせるために、どれ程の労力を費やしたか。

その帰りがけに、宿主に明日の朝食の時間を告げるためロビーに足を向けると(まだウロウロするつもりなのか!!)、そう広くは無いそこに置かれたソファーに座る桃城と海堂が目に入った。
浴衣から着替えて、普段からよく見るラフな格好の二人。着替えが必要なくらい汗をかいた理由なんて絶対に聞くものか。(手塚絡みな確率93%)

そんな二人に近付き、明日からの二年生中心の体制移行を告げる手塚。
ソファーに座る二人と立ったまま話す手塚とでは身長さが顕著で、二人は自然上を向く形になっている訳だが、その視線は、歩いたことで少し開いた手塚の胸元に注がれている。
海堂が恥ずかしそうに目線を落とすのに対し、桃城は見惚れたように胸元から目を離せずにいるようだ。


・・・その様に何だか無性に腹が立った。今までの鬱憤が溜まっていたこともあるが、何よりどんな男をも骨抜きにするほどの存在にも関わらず、手塚がこうも自分の魅力に無頓着な様子が焼け付くように苦しい。
この合宿中に桃城が気の迷いを起こさないという保証もないというのに、何と無防備な。

ここで少しは牽制してやろうか・・・。そういつに無い早急な思考で、出掛ける前に付けた手塚の胸元のキスマークを見せ付けてやろう、と合わせに手をかけようとしたその時、伸ばしかけた腕を手塚にピシャンと払いのけられた。

桃城の視線には頓着しないくせに、俺にはこの反応。ったく、いい性格してるよな。

思わず、怒っていたことも忘れ、苦笑を浮かべていると、話は済んだとばかりに手塚が廊下へと歩き始めた。
置き去りにされた形の俺達だったが、手塚が俺を見ながら顎をしゃくる。

(はいはい、付いてこいってわけね。)

まさに主と従者の格付け。これがいつものポジションであり、ほいほい付き従う俺も俺だった。


next
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ