novel?

□雫石
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久しぶりに、昔好んで読んでいた本を開いた。
古い本の独特の香りと日に焼けたその装丁が懐かしくて。
過去の自分に触れた気がした。

今、愛し愛されてることが少しだけ分かるようになった俺が読んだその同じ本は、昔と同じではなかった。
そう、決して。

それは、少し奇妙な日々を描いたある一人の男の子の話だったけれど、昔の自分が感じたのは、そこにある冒険心と高揚感、そしてほのかに感じる愛の片鱗・・・だったはずだ。

でも、今はどうだろう?

手のひらに落ちたこれは?
頬を伝うこれは何?

涙が溢れてくるなんて。

優しさに、心が締め付けられるなんて・・・。

こんなにも、この男の子の気持ちが伝わるのは、俺が愛を知ったから?
愛から生まれる優しさを知ったから。


真面目で堅物で、いつも自分を律していた、そんな余裕の無い心を変えてくれたのは、時間なのだろうか?

否、もう答えは、自分で気付いているんだ。

だった一人の、一人きりの彼に出会えた。
彼の愛を一心に浴び、新しい自分が形造られたからなのだ、と。
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