novel?

□I'm nut about you.
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「あら、国光。お電話誰だったの?お友達かしら。」

台所から、エプロン姿の母が、スリッパをパタパタ言わせながら近寄ってきた。
夜9時からの一時間。
比較的厳格・・・と言われるであろうこの家で、俺がこの時間に一人で外出したことはない。
・・・外出の許可を、何と言って取ろうか。
いや、まず、何と言って切り出そうか・・・。

「ねぇ、国光。お母さんのお話聞いてたかしら?」

はっと顔を上げると、見上げるように母が顔を覗き込んでいた。
まずい、どうやら考え込んでしまっていたらしい。まったく話が耳に届いていなかった。

「すみません、お母さん、もう一度話して頂けますか?」
「そんなに、堅苦しいお話じゃないわよ。
お夕飯の支度が出来ましたよ、っていうだけのこと。」
「それなら、了解しました。すぐにダイニングに向かわせて頂きます。」
夕飯のことか、そう言えば、今日は母がブッシュ・ド・ノエルに挑戦する、と言っていたような、いないような・・・。
あんなに好きな母の手作りケーキのことなのに、頭の中は越前との約束のことでいっぱいで。
あぁ、こんなの俺じゃないみたいだ。

「ねぇ、それよりも、国光。今日はいいの?」
突然、母が、階段から降りてきたままの俺に近付いて来て、何やら耳打ちをする。
「いいの?と仰いますと?」
「国光、今日はクリスマス・イブなのよ!!好きな人と過ごさなくていいの?ってことよ♪」

「す・好きな人ですかっ。な・何を突然っ!!」
「隠そうったって無駄よ、国光☆最近、妙に嬉しそうな顔をしている日が多くなったし、空気も柔らかくなってるのよ、貴方。
春頃からかしらねぇ、あんなにいらないって言ってた携帯も持ちたい、なんて言うし。
これは、好きな子が出来たわね!!って、お母さんピンときちゃった☆
いつ紹介してくれるのかなぁ、と思ってたのに、国光、イブも家族と過ごすとか言うじゃない。もう、やきもきしちゃってたの。
・・・、でも、その顔を見ると、どうやらその子と連絡してたみたいね☆
で、どうするの、国光?」

日頃から、母は聡い、とは思っていたものの、まさかここまでの洞察力を持ち合わせていたとは・・・。
我が母ながら、かなりの強者だ。母の目は爛々と輝いている。興味津々といった様子の母に告げるのは、変に勇気がいるが、越前との約束を持ち出すには今しかない!!
俺は、意を決して口を開いた。

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