novel?

□sweet time
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久しぶりに会った手塚は、少しだけ疲れているようだったが、顔色も良く、何より表情が柔らかい。

それが、俺によって引き出されているのなら嬉しい。



予約をしていた店で、ディナーをし、二人気に入りのバーでカクテルを二、三杯飲んだところで帰路に着いた。

都心のマンション。
二人の帰る場所。



ほっと一息付ける時間。
ゆったりとしたソファーの右側が俺の定位置だ。
手塚の隣りに座り、肩に腕をかけた。体温が気持ちいい。


手塚が腕の中にいるのだ、と暖かさと共に実感していると、手塚に声をかけられた。
張りのある、透明な声。


「跡部・・・今日は何の日か知ってるか?」

何だろう、何か試されているのだろうか?


「あぁ、クリスマスだろ。
お前と過ごせる時間に比べたら、そんな行事どうでもいいようなもんだけどな。」


クリスマスなんて気にもしたことの無い手塚がどうしたのだろう?
行事を気にするのはいつだって俺の方なのに。


「いや、だから・・・。
跡部、いいか。今日はクリスマスだけど、これはクリスマスプレゼントなんかじゃないから。」
そう言って手塚が取り出したのは手の平サイズの小箱。
ラッピングもされていない、黒い箱だった。
「渡せなかった誕生日プレゼント。
でも、受け取ってほしいんだ。」

真剣に伝えてくる手塚の瞳に俺の顔が映る。
おい、そんな幸せそうな顔しやがって、と思わず苦笑しそうな程に嬉しそうな俺自身が覗いていた。


「ありがとう、手塚。
それなら、ちょっと待っててくれないか。」

そう告げて、手塚の温もりから離れ、小走りに書斎に入った。

誕生日に渡せなかった、プレゼント。
今渡さなくて、いつ渡すというのか。


急ぎ足で戻ってくると、手塚の目を見詰めながら、俺からもプレゼントを渡す。
こちらはラッピング済みだが、クリスマスカラーなんかじゃない。
手塚の好きな青色のリボン。


「受け取ってくれよ、手塚。
俺からも誕生日プレゼントがあるんだぜ。」

「でも、お前からは、誕生日に・・・」


「あれはあれ、これはこれだ。
やっと似合うものを見付けたから、どうしてもこれは顔を見て渡したかったんだ。」


そう言って握らせた小箱は手塚の物と同じ大きさの・・・まさか・・・。
「ありがとう、跡部。
行儀が悪いが今、開けて見てもいいだろうか?
お前のものも開けてみてくれ。」

「あ、あぁ。」


包装の無い箱は直ぐに開き、中からは想像していた通りのものが出てきた。
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