novel?

□裏の裏の裏は裏
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「あぁ、案ずることは無い。俺は馬役の乾だ。」


「馬・・・」
「役・・・。」

「分かった・・・ってことにしておく。


皆が脱力しきった中、いち早く復活したのは跡部であった。流石は王国の一王子、と言った所であろうか。


「姫の美しさは十分理解したぜ。絶世の、しかも天然の美女ってことだろ。
造り物に興味はねぇ。俺様にピッタリじゃねーか。
まぁ、美しかろうが、何だろうが変わらず接するのが俺のポリシーだけどな。
で、魔女のことはどうなったよ?」

「魔女は・・・」
「実物見た方がよ・・・」
「早いんじゃない?もう城に着くしね。」


言い争っていた内にどうやら城の前まで来ていたらしい。
青春王国の城は、白と青を基調とした、優美な佇まいだったが、現在では視る影も無く、灰色の城になっていた。ただし、予想していた茨は見当たらない。


「茨に覆われている訳じゃねーんだな。」

「ぶっちゃけ、魔女的にもそんな暇無かったんだと思うんだよね。」
「まぁな。」
「魔女も大変そうだったスからね。」

三者とも同じような台詞を口にし、先を促す。城の門は開いたままであった。
「では俺はこの城のデータを取っていることにしよう。馬は城内には入れないだろうしね。」

「お、おう。まかせたぜ。(ってか馬がいたこと忘れてたぜ。)」

いささか怯えながら城内に足を踏み入れる跡部。城内には何が待ち受けているのだろうか・・・。





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城の中は、外界と別離しているかのようにひんやりとした空気に満ちていた。

「姫の部屋はあの上だぜ。」
「俺でも跡部さんの代わりできると思うんスけど。何で姫はあんたを呼んだんスかね。」
「でも俺は勝てる気はしないにゃ。」

妖精達は口々に勝手なことを言っている。役に立ちそうな情報を告げるのは宍戸のみだ。
最初から後の二人にはまったくヤル気は感じられなかった訳だが・・・。

「とにかく状況がいまいち把握出来ねぇ。まずは姫に会わねぇとな。
ん?この部屋か。」

跡部は重厚な造りの扉の前で足を止めた。中からは微かに明かりと、争っているような声がする。

「何だか、入りたくねぇ気がするのは、俺の考え過ぎか?」

この時点で不穏なものを感じた跡部のインサイトは相当なものだろう。だからと言って、逃れられる訳ではない悲しい運命、基い責任感。
跡部は取手に手をかけ、扉を開いた。






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