紅い雲の夢

□愛することで強くなること
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【人を愛してはいけない。
人を愛せば、
自分が弱くなる。】

幼い頃、霧隠れの里で
徹底的に習った忍訓だった。

忍に感情は要らない
…愛情なら、尚更。
それが、忍。
それが真の忍ならば、
私は忍失格だ…
つくづく、鬼鮫はそう思う。

目の前には木があり、
その下でイタチが眠っている。
イタチに掛けられた
大きなコートは鬼鮫のもの。

「いつからこんなに
丸くなったんだか…」

荒々しかった自分は、
今では弱くなってしまった…
それは、この人を
愛してしまったから。

「私は弱くなって
しまったのでしょうか…」

己の相棒、鮫肌に問えば
カサカサと答えるように疼く。

「…そんなこと、
ないですよね…」

愛した人を護りたい…
その想いが、人を強くする。

その説が正しいなら、
自分はいくらでも
強くなれる気がした。

イタチの頬を、そっと撫でた。
こんなに血で汚れた
青白い手ですら、
護るべきものがあった。

「私は、アナタを
御守りいたします…」

イタチの運命(サダメ)に
終止符を打つ
その時まで…

誓いを立てた鬼鮫は
空を見上げる。

彼の誓いを
受諾したかのように、
空が晴れていた。



end
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