刻
□どんなに願っても
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どんなに願っても、あなたは私という存在を見てはくれない・・・
私が新撰組にいたときには、私を必要とし妻にすると言っていたあなた・・・あの時からどんどん惹かれていったの、あの頃は素直になれなくて反発ばかりしていた。
自分の気持ちに気づいた時にはもう遅かった。
「千景!」
「千姫」
お千ちゃんの名前を呼ぶあなたはとても優しい笑顔をしていた。お千ちゃんも幸せそうな顔をしている。
そんなあなたたちを見て、私の心は壊れそうになる。
みんなに迷惑をかけまいと新選組を出た後、お千ちゃんに助けられ家に招かれた時には驚いた・・・そこにはあなたがいてやさしい顔をしていたから。
私が知らない間にお千ちゃんとあなたは恋仲になっていた・・・
一人になったときには涙を流した・・・「祝福をしてあげたい」そう思うのに悲しく、せつなくなる・・・そんな思いをしないで済むように、自分の心に蓋をすると決めた。
「お千ちゃんもうすぐだね」
「えぇ、どんな子供が生まれてくるのかしら」
おなかに手を当て微笑むお千ちゃんを見て蓋をしたはずの心がひどく傷む・・・
「・・・私、ここを出ていくね」
このままいてはどうにかなってしまいそうだった。
「何で?ここを出てどうするの?」
「私の一族の暮らしていた処に戻るわ」
ここには私の居場所がない・・あるのは醜い心をもった私だけ・・少しでも早くここを立ち去りたかった
「明日には、ここを発つわ」
「明日いくの!?」
「うん、明日は天気がよさそうだし!」
ちゃんと笑えてるかな?そう思ったけど、明日戻ると決めたら少し心が軽くなった気がした。ちょうどあなたがいない時を選んで出ていこう・・・
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