Novels Room2

□Bloodstained victim
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 夜も更けて、寝静まった路地を歩くのは、やはり怖い。
 つい先日もそれが起きたという。
 心持ち早足になっていた自分の耳に、前方から硬い足音が届いた。
 初めは肩がすくんだが、足音がヒールの音だと気づくと、安堵に息が漏れたくらいだ。
「…ねぇ、貴女」
 それは擦れ違おうとしたときのこと。
 いきなり足音の主に話し掛けられた。
「なんですか?」
 見上げた先には、端正な顔立ちの長身の女性がいた。
「…………?なんなんですか?」
 視線が交差する。
 しかし彼女は話し掛けてきたきりで、口を閉ざしたままだ。
 苛立ちと、小さな恐怖の芽が芽吹く。
 ――ふいに彼女が鮮やかに笑った。
「え?…あ、きゃああああぁぁあっっ!!…」










「逃げろ!!」
 ネオンが届かぬ、暗い道。
「殺される!!」
 変に人気が絶えた道中を、多種多様に変化した異形が蠢き、さ迷う。
「あいつから」
「あいつから」
 異形の表情には焦りが浮かんでいる。
 恐怖から逃げ惑っているようにも感じられた。
 最後尾についていた、鳥のような、蛇のような異形が、断末魔をあげる間もなく潰された。
 異形たちの思考が、意思に反して凍結する。
「――何をそう怯えている」
 鋭さを孕んだ声が響く。
「わたしは客だ。…客の顔を見て逃げ出すのが、お前たちの礼儀なのか?」
 瞬く間に空気は血に染まり、跡形もない残骸が散らばった。
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