Novels Room2
□女神(にょしん)の罠
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京(みやこ)の北方、貴船山。
清らかな空気満ち渡るその中に、突如凄絶な神気が舞い降りた。
「____」
波を描く豊かな髪、首にさげられた龍珠、冷ややかな面差し。
人身を取った祭神・高龗神だ。
「____つまらない、な」
眼下に広がる夜闇の京を見下ろしながら、小さく小さく、祭神は呟いた。
窮奇の一件であの子供を見出して以来、何かと息つく暇も無かったというのに、今はこんなに静かだ。
まあ、あの頑是無い人の子には、「なにもない」のが一番なのだろうけど。
しかし。
神は無限にも近い悠久の時を生きている。人間達がこぞって希う不老不死に近いが、いたってつまらない。
そんな神に見出されたのだ。
この神にそんな思いをさせるなど、それこそ失礼というものだろう?
「____頑是無い、人の子、か・・・・・・」
強い意志を秘めたその瞳を思い出す。
そうして、その子供に従う十二神将を。
「そういえば・・・」
それで思い出すものがある。
脳裏に設計図を描き、知らず口の端が吊り上がっていた。
「それがあったか・・・」
一陣の風が吹く。
瞬く間に高龗神の姿は掻き消えていた。