Novels Room2
□恋社 -こいやしろ-
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名前を呼んでほしいと、ずっと願っていた。
あの声に。
呼んでほしかった。
この、声に。
再び呼んでもらえたから、もう満足だと、もう十分だと思った。
だけどそれだけでは足りなかった。
もっともっとと、心が要求し始めた。
なんども押し殺そうとした。
だけど無理だった。
その姿を目にするたび。
屈託なく笑うその笑顔を見るたび。
己に差し出された手を取るたび。
そのたびに想いは膨らんで。
そして心をきりきりと締め付ける。
叶わないと、知っているのに。
ゆらゆら揺れて、常に燻っている。
さながら、焔のよう。
消せないこの想いを、ならば秘めているしかないでしょう。
誰にも、貴方にも、気付かれないように。
本当は、欲しい。
欲しくてたまらないその瞳、声、体、なにより心を。
でも手に入らないと分かっている。
欲しい。
求められたい。
叶わぬ想いに締め付けられて、それでもわたしは、この想いを愛おしいと、貴方が愛おしいと思うのです。
ねえ、貴方。
けして叶わないと知っていても、それでも神に乞い願うのは、わたしが愚かなのでしょうか。