小説・陽光に包まれて

□小春日和
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「清良。電話。入社する会社からだよ」
「え?」
バイトから帰宅して、ほっとした気持ちで夕飯を食べてた時だ。
「こんな時間に?」
この間、早い目の内定を貰って、4回生の1年間は卒業に向けて単位をしっかり取らなきゃと、思っていたのだ。
「はい。変わりました。」
「住吉清良さんですか。実はですね、大変申し訳ない話なんですが、この度の不況の影響で、当社も売り上げに…」
後は、意識が無くなったのかと思うほど、全く覚えていない。
ただ、つまり、内定は、取り消しになってしまった…と解った。
大企業だったから、華やかな社会人生活を送るつもりでいたのに…。
東京のど真ん中でって…。
「新しい就職先が決まりますようお祈り申し上げます。失礼いたします」事務的で、冷たい言葉だった。
ツーツーツー。
「何よ…。今日は、何の日よ…。私が何したのよ!!」
最悪…。心身共に、冷えきっていくようだ。

♪〜
こんな時に。
液晶画面をみたら、涼介の名前。
今更なによ。大嫌い!
着信音は、暫くして切れてしまった。
結局その日は、涼介から連絡は二度となかった。
「ばか…涼介、一度で諦めるなよ」
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