小説「天使達のBlessing」〜もう一つの記憶から〜
□女神の願い
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キラキラ キラキラ
目に見えない粒子の様な小さな光が、くるくると舞うように回りながら…。
こちらに向かってくる。
「おかえりなさい。」
私がお仕えしているカシオペアの女神様は、地球から飛んできた小さな光のかけらを大切に受け止めて微笑まれた。
「残していた御魂の一部ですね。」
「ええ。そうよ。」
女神様は、この御魂を3万年も大切に育ててこられた。生み出した数え切れない御魂達の中で、一番大切にされている。
「いよいよなんですね。」
「今の危機は、この御魂にしか救えないの。この時の為に、この御魂は3万年の修行を課せられてきたのですから。
ねぇ、シュウセイ。
もう充分傷を癒やしてきたのですから、本気で頑張って貰わねば。」
瞳を閉じて全身を七色に輝かせた女神様は、輝く薄いブルーの清々しい御魂を生み出した。
そこへ先程の小さな光のかけらが吸い込まれ、ブルーの御魂は青年の姿になった。
前世の姿。宇佐愁星の姿に。
今ここにケルビムがいたら、どんなに喜んだろう。
だが彼は、女神様の仕組みをこの御魂にバトンタッチする為、人間として生まれ頑張っている。
「よくお聞きなさい。元の肉体には戻れぬが、その子供の御魂と一つになるのです。」
澄んだ瞳の彼は、理解に苦しむ表情で暫く女神様を見つめていた。
「…子供?」
「そう。愁星と志織の子。」
「愁星…志織…。子供…。子供…。ぁ…初めて俺達の宝物が…できたんですね。」
「そうね。3万年の愛の結果の子。」
3万年間 求めても結ばれる事が、女神様から許されなかった2つの御魂が…肉体ではあるが無理やりに結ばれたのだ。
それは、女神様が大切に育てらてきたこの御魂の破壊に繋がる事になる故、避けてきた事なのに。
しかし女神様は、2人に子供を授け次の役割を与えたのだ。
「その子供は?」
「菊田崇星(すばる)。あなたの一部は、先程まで兄の真澄の中にいたんでしょ。会っているはずよ。」
「…崇星が…子供?…あいつが…。俺達の…?」
「そう。愁星の子。その子供の御魂と一つになって、危機を救いなさい。」
「崇星の御魂と、一つに?でも、その御魂に影響はないのですか?真澄のように。」
「大丈夫よ。彼は、ケルビムだから。そなたと一つになって、使命を全うする事を喜ぶでしょう。」
「崇星が、ケルビム?…俺が天使のケルビムと一つになっていいんですか。」
「ふふ、大丈夫。そなたは元々…。
ケルビムは、今、地上で唯一私が降臨する事が出来る御魂と出逢っているの。」
「女神様が唯一降臨出来る御魂?」
「ええ、彼女も、そなたと同じ御魂よ。使命ある御魂。彼女と力を合わせて、あの星の人々を救うのです。」
「救う…?そう言えばケルビムもそんな事を言っていた。救うって、そんなに地球は危ないんですか。」
「ええ。今のままでは…宇宙を作られた親神様が、そうされるシナリオになっているわ。心を入れ替えて貰わねば、三割の人類しか生き残れぬ。地球は、亡者の星になるのです。」
「亡者の星…。そんな…どうして…。」
「愚か過ぎるからよ。克つてない程に、赦されない程に。同じ過ちばかりを繰り返す。警告を与えては来たけれど…。」
「あなたは、女神様なんでしょ!!どうして人間を救えないのですか!!」
「ルールなのです。親神様が作られた規則なのよ。私達は、人類を愛しているわ。存在を否定されても、利用されても。私達は、変わらぬ愛を向けてきたわ。」
「それなら、救ってくれたって!」
「愛しているから、三万年前に親神様があなたを送り出したのです。あなたが、私達の愛の遣いなのです。
300年後には、地球の中心がポラリスから、高貴な魂を司るベガの女神に変わります。
つまり、秀でた御魂達のみの歴史がはじまるのです。」
「秀でた御魂のみの…。」
「もう決まっている事。ならば、全ての御魂にそうなって欲しいと私達は願っている。しかし、このままでは三割しか残らぬ。甘えと欲望で傲慢に堕落し、腐りきった御魂は、輝かしい時代には生まれ変われぬ。未来永劫、そのレベルの星で学んで貰うしかないのです。」
「それを…俺にどう救えというんですか。」
「改心を迫る事柄を様々用意してあるわ。私のさじ加減で、地球を急激に暑くも寒くも出来、彗星の軌道も変える事も出来る。」
「そんな!!」
「裁きを与えたりはしないわ。人類達の敬意で…誠ある行いで、未来は変更できるのよ。
そなたには、それを期待しています。」
優しく笑った女神様は、彼を元の青い御魂に戻し、祈りを込めて宇宙空間へ解き放った。
御魂は物凄い速さで目標の地球を目指して飛んで行った。
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