小説・陽光に包まれて

□しょっぱいはちみつ
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「なぁ、ハニー。ここどう解釈するんだ」
「あぁ。これはね、宗像教授も言ってたように、あまり気を取られると、全体が解らなくなるから、参考程度に読んだ方がいいんだよ」
「ねぇ、ハニー。ここは?」
「そう、その章が一番重要なんだよ」
「そうか。サンキュ」

学食で、ふりかけご飯を食べてる途中にも関わらず、友達に質問されている。
伊勢田君は、嫌な顔も面倒くさそうにもしないで、きちんと答えてあげている。伊勢田君って…やっぱり良い人なんだ。

「清良」
「え?」
「見すぎだって」
「え?」
「伊勢田の事」
「え?見てたっけ」
「さっきから、ずっとだよ」
「えへへ。あ…亜依子ぉ。どうして、ハニーなの?」
「はるみつだからよ」
「…はちみつ?」
「そう、もうちょっと捻ればいいのにね」
「でも、優しい伊勢田君には、合ってるんじゃないかな」
「ふーん。で、いつから骨抜きになったのよ。清良。一目惚れとか」
「え…いや、べつに」
「まぁ。この際、涼介すっぱり切って、伊勢田に変えた方が幸せだよね」
「…亜依子」
確かに私は、さっきから伊勢田君が気になってる。
「さってと。三講目始まるし行こうか。後は、健太郎んちだし」
「そうだね」
席を立って、伊勢田君達を振り向いたら、もういなかった。
熱心な人達は、教室に行くのも早いんだね。
あれ?なんだろう?
「亜依子、先に行ってて」
「ん?なんか用事?」
伊勢田君のいたテーブルに移動したら、亜依子もついてきて、
「あっ、落とし物だ」
「うん」
「これ、伊勢田のだね」「そうなの?」
「こんなボロっちいマフラーは、さっきの二人はしないよ」
「うん、そうよね…」
「あっ、遅刻するから早く行こうよ」
「あ…ごめん」
私達は、教室に走った。伊勢田君のマフラーを握りしめて。
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