小説・陽光に包まれて

□迷走
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昨日の亜依子は…おかしかった。バカみたいにテンションが高くて。
私の知ってる亜依子じゃなかった。
涼介の事でブルーな私に、伊勢田君に会いに行くように背中を押してくれた後なのに…どうして、あんなに笑って涼介もいる飲み会に誘えたんだろうか。
おかしい…。おかしいよ、亜依子。なんか変だよ!
いやだ。なんだか、嫌な予感がする…。
亜依子。
亜依子に逢って聞かなくちゃ。




1講目の教室に向かった。
亜依子は、健太郎と楽しそうに笑っていた。
教室の入り口に入ったばかりの私を見つけて、元気よく手を振っている。「おっはよぉ!!」
「おはよう」
「清良。おはよう」
「あ。健太郎、おはよう。昨日はごめんね。」
「いや。気にすんなよ。」
健太郎がいるから伊勢田君の話もできない。
仕方がないから、二人の話を聞いていることにした。
そうこうしている内に、他の友達も席に集まってきたから、ますます亜依子とは話せなくなってしまい、結局授業の時間が来てしまった。
伊勢田君は、違う教科を取っているのか、教室に姿は無かった。

昨日のパンのみみスティックの味が、ふいに思い出されて気持ちが和らいだ。
“何にやにやしてるの”隣から、亜依子がノートに落書きをして来た。
慌てて消しゴムで消して返事を書いた。
“2講目授業取ってないでしょ?。その時に話すから”“了解”
亜依子は、にっこり笑って前を向いた。
3講目まで、たっぷり時間があるから、伊勢田君の事だけでなく、昨日の事や涼介の事も聞こう。
『いつまでも、泣いてちゃだめなんだよ』
伊勢田君の優しい言葉を、胸の中で何回も何回も繰り返した。
そう、今決断の時かもしれない。涼介との事を終わらせる…。亜依子も言ってくれてたから。
泣いてばかりは嫌だもん。涼介だって、その方がすっきりしていいかもしれない…。もう、泣かない。
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