小説・陽光に包まれて

□friend
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伊勢田君と教授室で別れてから、何日も経ったけれど、あれから彼を見かけない…。
今朝も、校内にいなかった。
「清良?」
「ん?」
「ずっと元気ないよ。心配だし、話してよ。この間、伊勢田と手繋いで出てった事も聞いてないし」
「うん。また…そのうちに言うよ。」
「涼介と別れて、伊勢田と付き合う事にしたの?」
「…付き合ってなんかないよ…」
伊勢田君は、優しいから、泣き顔の私を笑顔にしたかっただけで。
好きだとか、そんなのじゃない…。
それに、誰も信じられない…みたいに言ってた。
誰も信じられないけれど、泣き顔の人を笑顔にしたいと言う伊勢田君を…信じてくれてなくても…何回も何回も彼の温かさに救われたから、知らん顔なんかできないよ。
ほっとけないよ。
「清良?」
「ごめん。本当に今度ちゃんと話すから。」
「どうして?伊勢田との事は、私に言えない事なの?」
「そうじゃないの。今度ちゃんと話すから、今は待って。」
「あの日、私と健太郎がいなくなった後、伊勢田と何かあったんでしょ?」
「何もないよ。伊勢田君とは、何もないよ。」
「だって伊勢田、凄く悲しそうな顔して、清良の手引いて行ったじゃん!何もないはずないでしょ!!」
「…そんな、悲しそうな顔してたんだ?」
「うん…あんたも伊勢田も。」
私は、席を立ち上がった。
「清良?!」
「亜依子、ごめん。ちょっと行ってくる。」
「どこに?」
「代返、お願い」
「ちょっと、清良。それ無理だから。」

どうして伊勢田君は、私の事なのに…亜依子が気にする程の悲しそうな顔をしてたんだろう。
どうして、笑って欲しいって優しくするのに、信じてないって言うんだろ。
わからないよ。
教えて欲しい。


コンコン

私は、宗像教授の部屋をノックした。
けれど、応答はなかった。
講義中なのかもしれない…。
掲示板で調べると、宗像教授は、四講目までスケジュールが決まっていた。
四講目が終わってから訪ねる事にした。
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