小説『記憶』

□カシオペアからの指令
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ペガサスは、カシオペアの宮殿で女神に逢っていた。

「なんとか、思いとどまらせる事はできました」

女神の前では、金色の翼の美しい天使の姿になっていた

「今世で、なんとか修復してもらわなければね。なんとか大いなる使命を思い出して発願して貰いたい」

女神は、シュウに役割を与えているのか、厳しい表情だ。

「天命と数回前からの前世からのすれ違いによる悲運を改心して貰う為には個人的な前世の話をするか、あれを使わなければ難しいかと」
「まだ、早い。もっと分かり易くと説いてやってからにしなさい」
「はい。」
「時間がないから、急ぎなさい。近々、あの御魂に出逢う時が迫ってくるわ」
「はい。精一杯、私のできる限り導きます」

「相手の御魂は、数万年前から、神使いの発願をし続け、その道を生き貫いていると言うのに。」

女神は、静かに目を伏せて ため息をついた。

学校に行かないシュウは部屋の中でぼんやりしていた。
昨日、帰ってしまったペガサスは まだ戻ってこない。

「ペガサス…」
「なぁに」
「!」

ふりむくとペガサスが小さな男の子の姿でベッドの上に座っていた。

「毎日ぼんやりしてるだけ?」

にっこり笑ってみせた。

「うるさい」
「シュウは、何か目標とかないの?」
「ない…」
「じゃあ、何か見つけなくちゃね」
「いいよ」
「ところでさぁ、こうやってお休みしてて、卒業出来るの?」
「さぁ…どうだろう」
「まだ、最近だよね。休みだしたの」
「あぁ」

ペガサスは、空中に手を上げてからシュウの胸の辺りに両手を下ろして、手の中から丸い玉を出した。

「なんだ?それ」
「君の天命」
「?」
「ずっと昔からの天命の塊」
「なんで、お前が持っているだ」
「今、出したんだよ。君の胸の奥から。ほら、綺麗に光ってるよ」

その玉は、色んな色に変わりながら、キラキラ光っていた。

「人はみんな、生まれて来る時に、神様に学ぶテーマを与えられるんだよ。その中には、自分が成し遂げる目標もある。前世、文学を成し遂げたから、今世は、音楽とか、戦いばかりだったから、平凡でいいから女に生まれて
子供を産み慈しむ心を学ぶとか。
ねぇ、ちょっと練習しただけでピアノが上手に弾ける人と、どんなに頑張っても出来ない人いるでしょ?
それは、前世からの積み重ねの違いなんだよ」
「ふぅん」
「だから、色んな経験は、喩え成し遂げられなくても無駄じゃないんだよ。来世に持っていけるし、そのプロセスを神様はニコニコ見てるんだよ」
「…」
「だから、シュウ。もう一度、夢と志を見つけようよ」
「来世の為にか」
「今世と来世の為に」
「でも」
「一度死んだつもりで、生まれ変わって、1からやるんだよ。僕が付いてるから」

シュウは、うつむいて、黙ってしまった。

「シュウ」
「俺が、…変わっても、周りは変わらないだろ。」
「ううん、変わらないんじゃなくて、君が変われば、環境はかわるんだよ。」

ペガサスは、空を見上げて、にっこり笑った。

「?」
「君は今回こそ、かわるんだよ!絶対に」
「今回こそ?」

ペガサスは、ちょっと考えてから、シュウを見つめた。

「たとえばね、親子なのに、又夫婦なのに、お互いに罵り合ったり、無関心なカップルがいるとするよね、今世神様から許し合い助け合い、お互いを慈しみ合う事を努力するのが学びとして生まれ
たのに、喧嘩ばっかりで、たいして良いこともしてなかったら…来世も選ぶ自由なく、やり直しって事で、その魂と夫婦になったりするんだよ」
「ふぅん」
「生まれ変わる時は、自分と縁がある人達も一緒じゃないと生まれ変わらないから、まぁ、縁ある人って、いつ生まれ変わっても、どこかでかかわっているんだよ」
「そうか…」
「だから」
「なんだよ」
「喧嘩してる人達も前世で、知っている人だったって事」
「はぁ…じゃあ、来世も一緒かよ」
「今のままじゃ、また、悪い形の関係になるよ」
「…つまり、前世…俺が、あいつらに…」
「したんだろうね。庄屋と小作人の関係とか、主人と使用人の関係とか、君がただの盗人とか」
「…」
「それに気付いたなら、毎晩観てる星の神様や君の守護霊にお詫びして、今日からは、こういう風に生かして下さいって毎晩お祈りしてご覧よ」
「…守護霊?」
「あっ、言ってなかったかな。君のそばで365日24時間休みなく、君を見守り、天命の道を外れないように導いている高級神霊だよ」

シュウは、あたりをキョロキョロ見回した。

「どこだよ」
「遠くから、見守ってるよ。いよいよ、危なくなったら、そばに来て、導くけどね」
 

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