小説『記憶』

□大いなる意志の悲願
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ペガサスは、シュウを
じっと見つめて
ゆっくりと伝えた。

「話してなかったかな。君の事を、守護霊が土地の神様の産土神様に助けを求めて、産土神様が天照大神様に助けを求めて、今時代を動かしているカシオペアの神様と北極星の神様に伝わって、僕が使わされたんだ。」
「随分、手がかかるんだな。」

ペガサスは、ため息をついてシュウを少し睨んだ。

「普通は、ここまでしないんだよ。」
「え?」
「普通は、守護霊が必死に頑張って終わりなんだ。
頑張ったとしても、天照大神様止まり」
「そうなのか…?」
「神様自身が作られたルール違反をしてまで、僕を送り込んだって事は、どういうことか解る?」

ペガサスは、シュウに詰め寄った。

「…」

シュウを厳しい目で見つめたまま、一瞬にして美しい天使の姿に変わり金色の羽を広げた。

「はっ…」

シュウは、息を飲んだ。

「この世に、必要ない者など一人としていない。汝は、一層必要な者である!ゆえに、汝を守るように遣わされたのだ。
神様にどれだけ愛され、必要とされているかが解らないのか。」

「…ペガサス…天使だったんだ…」
「私はケルビム★。」
「…ケルビム★…」
「道を誤ろうとする汝をなんとしても守らなければならない。
汝の思いを気安く祈り、願いたまえ」

シュウは、無意識に泣いていた。

「…俺だって…変わりたいよ!だけど…どう変わっていいかわかんないんだよ…。
何をしたいのかも、わかんないんだよ!毎日あいつらの憂さ晴らしにいたぶられて、真っ暗なんだよ!
祈れとか、願えとか言われても、胸の中には、何も無いんだよ!!」

シュウは、肩を震わせて泣いた。
ケルビム★は、シュウを見つめて、ゆっくりと話した。

「汝に夢と希望を与える縁を導こうぞ」

ケルビムは、シュウの周りをクルリと廻ってから少年の姿に戻った。

「さぁ、君の胸に希望の花を咲かせる為に頑張ろうね!」
「…うん。ありがとう。なんか、緊張するな…」
「さぁ、兎に角、出かけよう」
「出かける?」


小さな少年のケルビムとシュウは、あちらこちらを歩き、シュウの心に引っかかるものを探した。

「こんなことして、何か意味あるのか?絵画…あんまり、わかんないし」

シュウの足が止まった。
「…」
「シュウ?」
シュウが、じっと見入っていたのは、人類を守るために命懸けで戦う男とその死に涙する恋人の話のアニメーション。

「シュウ、い、行こうよ」
「うん…。」
「…ああ言うの…好きなの?」
「いや…好きじゃないよ。なぜ、戦うのかが解らなくて。ああ言うのは、いつ見ても、悲しくなるんだ。家族や恋人泣かせてまで戦うのがわからないよ。恋人や家族と楽しく生きりゃいいじゃないかって思うんだよ…」
「…シュウ」
「ごめん。ペガサ…ケルビム★も、こう言うの見たくないんだよな。行こうか」
「う…うん、あっちの楽しいの見ようよ」

ケルビム★はシュウの手を引いて、別のモニターを見に行った。

「人を幸せにするなら、こんな形がいいと思うんだ。」
「そうだね、平和な世の中なら、この形がいいかもね」
「平和…?」
「平和じゃないと、愛する人を守るために戦う愛もあると思うよ」
「…俺なら…ずっと側にいて…側にいて…側に…」

シュウが震えだした

「シュウ…」
ケルビムは、シュウの手をぎゅっと強く握りしめた。

「ねぇ、ねぇ。シュウ、アニメやお芝居とかってさ、自分じゃない人になれるよね。ほら、生まれ変われる感じがしないかな」
「…芝居」
「うん、そうお芝居。
お芝居習いに行こうよ!」
「えっ。でも、どうやって、」「必要な人を連れてくる。それが僕の専門分野なんだよ」
「必要な人?…」
「楽しみに待っててね。今夜、女神様に報告してからね」

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