小説『記憶』
□すれ違いの魂
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菊田志織は、戸惑いながらも、穏やかに聞いた。
「私、宇佐さんの気を悪くするような事したんでしょうか」
「…いえ…あなたは、初めてここに来て…懐かしいと思ったって。それと同じように、俺に会った時、何にも思わなかったんですか…」
「宇佐さんは…素敵な声優さんだから、お会いできて嬉しかったんですが」
「…それだけ?」
「…はい」
シュウは、気持ちの温度差と魂の記憶の違いに打ちひしがれた。
「残された俺は、こんなに苦しいのに…」
「…宇佐さん?」
「…どうしてだよ…」
「あの…意味が良くわからないんです。ごめんなさい…」
「あなたは…。俺が何万年前から…何回もの転生で…あなたに何回も取り残されながらも、一緒にいたいと願う人なんだ…」
「え…?」
「…今回こそ、離れたくない」
ガタガタと震えるシュウが、菊田志織の両肩を掴んでいた。
「…ケルビムの言う事なんか聞けないよ…」
「…ケルビム★…?」