小説『記憶』
□変化と試練
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スタジオいっぱいに
シュウの歌声が広がっている。
最近は、数本のアニメ番組、ゲーム、定番ドラマCD、ナレーション、ラジオなどで仕事が詰まっている。
「ハイ!OKです。お疲れ様でした」
今日は、キャラソンの歌入れだ。
数時間は掛かると思っていたが、1回でOKが出た。
「宇佐さん、凄いですね」
「え?」
次の歌入れで、スタンバイしている熱田が話しかけてきた。
「いつも上手いですけど、今日は感動しちゃいました。声の張りとか伸びとか力強さも凄いし、何かが伝わってくる感じがしました。
ヴォイトレとか念入りにしたんですか」
「いや…別に何も」
「そうなんですかぁ?なんか、俺やりにくいっすよ」
「からかうなよ」
「いや。本当に、最近の宇佐さんは、凄い存在感だって評判ですよ。事務所に行ってます?」
「行ってるけど?」
「ファンレター、半端じゃないですよ。あんまり、興味ないみたいですね」
「そう言うわけじゃないけど」
「じゃぁ。俺、次なんで」
「あぁ。じゃあ。」
『思ってたより、早く終わっちゃったなぁ。』
廊下を歩いて、エレベーターに向かう。