小説『記憶』

□原点の記憶
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『…こんな俺じゃ、また志織さんと、離れ離れになってしまう。駄目なんだ。俺は、変わらないと駄目なんだ』

シュウは、決心したように、投げ散らかした本の山に手を伸ばした。

「変われるなら、なんだってやってみせる。」

毎日毎日、何冊もの書物を読み、一流の音楽を聴き、映画にふれる日々を送った。
仕事の合間、移動の時も食事中も入浴中も眠り落ちるまで…。
ケルビム★の言っていた通り、ケルビム★の愛に応えるに、志織をこれ以上責めない為に、自分の魂を救う為に…。

携帯電話の着信メロディーが鳴った。
事務所の担当者三輪からだ。

「宇佐さん、驚かずに聞いてください。」
「何?」
「宇佐さんに、映画出演の依頼が来ました。」
「映画?俺、顔出しの仕事って一度もしたことないのに。」
「はい、先方様にも声優ですのでと申し上げたのですが、承知の上でお願いしていると。」
「はぁ?!どうして?」
「最近の宇佐さんのアフレコの演技が凄く磨きがかかっていて、プロデュースも監督もかなり、関心を持たれたようです。是非、宇佐さんに全身全霊で演じて欲しい役があるそうです」
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