小説『記憶〜分岐点からの道』

□亀裂と涙
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「女神様。
相手の御魂は、ずっと正義側の生き方を貫いた男だったから、情や彼の苦しみを受け止める事は困難なんでしょう」
「教育が偏ってしまっていたわね」
「はい。さっきの失望感でのヒビは…決定的です」
「そうね。」
「小さな振動で粉々に崩れ落ちるのには、時間はかかりません」
「可哀想な子」
「はい。…では、次なる救済人の白羽の矢は」
「あの方しかないわね」
「あの御魂の組織のリーダーで、女神様が守護している方ですか。
もう、若くないですが」
「ええ。ミカエル、ケルビムをここへ」
「ケルビムですか。」
「彼を人間に生まれさせて、あの方の次の本命の救済人にします」
「わかりました」

ミカエルは、スッと消えて北極星へ向かった。

一人になった女神は、静かに悲しみ色の息を零した。

「シュウセイ…あなたの歌声は、私も好きだったわ。本当に残念です。
長きに渡って、育ててきたけれど…。
私の愛しい子。
どんな姿になっても…粉々になっても、私の中に帰ってきなさい。」


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