小説・陽光に包まれて

□小春日和
2ページ/6ページ

「なぁ、シャーペン貸して」
大学に入学してすぐ、授業中に、前の席から声を掛けてきたのは涼介だった。
くるりと振り向いて、私の机に頬杖をついて上目使いで笑ったんだ。
サラサラと流れる前髪が、印象的だった。
筆記用具忘れるって、勉強する気ないだろぅって思ったから、あんまり第1印象は良くなかった。
「いいけど」
「サンキュー」
ビリビリってノートをちぎって、書いた物を渡してくれた。

九鬼涼介 メアド…
ケー番…。

「よろしくな」
「ム…。」
「お前は、なんて名前?」
「…住吉清良(すみよしきよら)」
サラサラっと、ノートに書いたら
「ぷっ、変な名前。漢字だと男みたいじゃん。なぁ、メアドとケー番教えろよ」

嫌なやつだと思ったけど、同じ高校から来た友達もいなくて、不安だったから…ちょっとだけ嬉しかった。
気が付いたら特別な仲になっていた。
でも涼介は、他にも沢山女友達がいたし、合コンばかり行って、お持ち帰りもしょっちゅうだった。
何回も別れようと思ったけど、やっぱり優しいから…別れられずに、そのまま三年間の付き合いが続いている。
「はぁ〜」
「店先で、溜め息つくな」
亜依子も涼介も、暖かくない…。
チーフも、暖かくない人。
寒いよ。なんだか、
早く、帰りたいなぁ。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ