小説・陽光に包まれて

□迷走
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お昼ご飯は、健太郎や他の友達が集まって来ない体育館裏で取ることにした。
「あのさ、亜依子。昨日電話した時…」
「あぁ、そうだったね。なんの用事だったの?」
「用事…って。」
「あっそうか。伊勢田にマフラー届けに行ったんだよね。で、どうだったの?はい。ありがとうって感じだったの?」
「伊勢田君は、私達みたいないい加減な人じゃなかったよ。どうぞってお家にあげてくれた。」
「えっ?友達でもないのに、家に入れてくれたの?珍しいね。」
「そうなの?寒いからって、温かいお茶と手作りのスナックを出してくれたよ。」
「えー?伊勢田がそんな事するなんて、初めて聞いたぁ。どうして?」
「マフラーを届けて貰ったお礼だって言ったけど…。多分、私がさっきまで泣いてたからだと思う。」
「伊勢田に言ったの?」「言うはずないでしょ?涙の後が顔に残ってたのよ。ひどい化粧崩れしてた。亜依子教えてくれなかったから。」
「え?気が付かなかったんだってば。ごめん。格好悪かったね。」
「ううん。そのお陰で、手作りのスナック作って貰えたから、ラッキーだったのかも。」
「そうかもね。」
「亜依子…。私、涼介と別れるよ。」
「え?決心ついたの?」
「うん。いつまでも泣いてちゃいけないし…。涼介も気が楽になると思うから」
「もしかして、伊勢田の存在大?」
「まだ、分からないけど。勇気は貰ったと思うの。」
「そうか。清良が決めた事だから、それでいいと思う。」
「それと、昨日電話したとき、どうしてあんなに楽しそうだったの?」
「楽しそう?あぁ。涼介がくれたメンソールの煙草がね、気分をすっきりしてくれて楽しかったのよ!」
「亜依子…煙草吸わないでしょ?」
「嫌いだったけど、健太郎にも勧められてさ。大嫌いな涼介の煙草なんか貰いたくなかったけど、健太郎が勧めるし。」
「…うん」
「最初は、むせたけど帳消しになる程気分爽快になるのよ。煙草が、あんなに良いもんだなんて知らなかった。清良も来れば良かったのに。」
「涼介って…メンソール吸わなかったのに…。」
「最近、変えたみたいだよ。」
「そうなんだ…。」
そんな事も知らない程、逢ってないんだもん。別れるも何も…涼介にとったら「今更」かもしれないけど、けじめをつけなくちゃと思った。
でも、涼介の煙草…なんだか気になるんだ。
確かに、お父さんも気分転換に煙草を吸うけど、昨日の電話での亜依子みたいには、ならないよ。「ねえ、亜依子。もう、涼介には、煙草貰わないで。」
「どうして?」
「なんか…」
「あ。こんな所にいたのか」
健太郎が現れた。
「亜依子。探したんだぞ。清良ごめん。亜依子借りてくな。」
「何よ!私は今、清良と話してるのに。」
「レポート見せてくれよ。俺、やってなかったんだよ。」
「もぅ。じゃあ、図書館で写す?清良、ごめんね。」
亜依子は、健太郎と図書館に行ってしまった。
「そうだ。涼介に電話しなきゃ」
ツー。ツー。ツー。
出ない…。やっぱり、いつもと同じ。仕方がないから、メールにしよう。
『涼介。今更だけど、はっきりけじめを付けたいから、もう、涼介とは終わりにします。今までありがとう。清良』

これでいいよね。

♪〜メール?涼介からの返信だ。珍しいな。こんなに早く、返事がくるのは…。


『了解。って終わりにしますって言われても、俺さ、お前と始めたつもりなんかなかったし。勝手に初めて勝手に終わらせれば?じゃな。』


え…。何?
何これ?
三年間…恋人じゃなかったの?
なんだったの?
私が…勝手に…?
どういう意味…?
涼介?
私は…なんだったの?






続く
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