小説・陽光に包まれて
□ともだち
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いつも、突然訪ねて行くから、電話は初めてだけど。
だから…指も肩も震えている。
トゥルルル
「はい。…住吉さん?」
耳元で聞こえてくる、伊勢田君の声に、胸の鼓動は益々早くなる。
「…うん。今日は、ありがとう。」
声も、解ってしまいそうな程震えてしまう…。
「手…大丈夫?痛まない?」
「うん。大丈夫だよ。」
「明日、無理しないで休んだらいいから。」
「…でも」
「気になるだろうけど、その手じゃノートも録れないし。同じ講義のものは、僕がコピーを持っていくからね。」
「うん。ありがとう。…はるみつ君…」
「ん?なに?…声…震えてる。…まだ、不安?。」
「…そんな事…ないよ…大丈夫…だから」
声が震えないように、ぎゅっと両手で自分の肩を抱きしめてみたけれど、止まる事はなくて。
「不安だとか悲しいとか、隠さないで話して。僕、ずっと聞くから。」
そんなに優しい言葉は、…。
今は、耐えられないから言わないで欲しいよ。
「…住吉さん?大丈夫…?泣いて…る?」
「…てない…」
「え?…でも」
「…ごめん…。大丈夫…だから…。…おやすみなさい。」
.
一方的に告げて、電話を切ってしまった。
自分から、声を聴きたくてかけておきながら、このまま話していたら、泣き出して止まらなくなりそうだったから…。
今…
あなたに
逢いたいなんて…。
ずっと一緒にいたいなんて…。
言えないよ…。
.