小説『記憶』

□呪縛と意志
2ページ/6ページ

「…あなたは、どの人生でも、自分の立場ばかり嘆いて、相手の気持ちより…自分の思い通りの幸せな日常を送ることを望み、叶えられなかったのは…相手が自分を捨てたからだと思った。それが、過ち。
そして、今は、苦しみの原因が解っていながら、乗り越える事を怠って、また、負けてしまっている。苦しみから逃れる為に、自分のみの感情を満たそうとしている。
それじゃぁ、あなたの為に犠牲になったケルビム★が可哀想よ」
「…ケルビム★が…犠牲?」
「天使が、ルールを侵してまで、あなたの前に現れたのは、きっと、本当に大きな役割があるのに、何万年も道をはずしていたからだけじゃなくて…。」
「なくて…?」
「知ってますか。転生輪廻は、誰だってしてきた事だけど、今度は、出来なくなるのよ。」
「え…?どうして」
「私が、教えて貰った話では、怠っていい加減な魂は、もう生まれ変われないの。世の中に良い影響を齎す綺麗な心で万能な愛溢れる魂だけが生まれ変わる世界になるんだって」
「そんな酷い」
「酷くないのよ。仕方がないよ。
…ケルビム★は、あなたには…生まれ変わって欲しかったんじゃないかな。今のままじゃ無理だし…苦しみに負けそうで、厳しさより、あなたが可哀想で…辛くて、早く救いたかったのかもしれない」
「…ん…」
「前世の事を伝えてしまうと、人は振り回されてしまうわ。あなたも、苦しみの原因は前世のせいで、苦しみを無くす為に、私を離したくないって思いに捕らわれてしまったわ」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ