短い話

□ロメオ
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注意⚠
月島くんと同じ名前という事や席順を考えドリーム機能はありません。









同じクラスに同じ名前の人がいた。
興味本意で話しかけたらすごい嫌な顔されて印象深く残った。


「初めまして。俺、由良って言うんだけど。月島くんってホタルっていうの?」

「………ケイ」

「ん?」

「つきしまけい。」

「けいって読むのか!俺も実は蛍って書くんだけど読みはそのまんまホタルって言うんだ。ゆらほたる」

「ふーん。」






そして、ケイはバレー部に入り俺はバレー部マネージャーになった。
名前が一緒ってだけで何かと親近感が湧いて仲良くしているが結局のところケイはいつもタルそうに話を聞いているし、話を聞いているかと思いきやヘッドホンを付けていたなんてこともザラである。

それでも、そばにいる内にバレーしてる姿だったり、2人でいる時の安心感だったり、多分これは恋なのだと思ってしまうのだ。


「って言うことでスガ先輩!助けて!」


そんなこんなで昼休み、3年のバレー部セッター菅原先輩に事を話しどうすればもっと仲良くなるか相談しに来ていた。


「うーん、あれはなぁ。引っ込みがきかなくなってるみたいな。」

「?引っ込み…?」


菅原はうーんと唸りながら腕を組むと、しばらくして由良の頭をくしゃくしゃと掻き大丈夫!と笑う。


「………………?」


その行動にクエスチョンマークしか出てこない由良はなんですか!と身を乗り出して菅原に食いつくが当の菅原はニコニコと笑みを浮かべるだけでそれ以上は言おうとしなかった。







ーー帰宅


自主錬も終わり、山口と月島が歩く隣で由良は自転車を押しながら話をしていた。
しばらくして、山口はサーブを見てもらうからということで別れ月島と2人で歩く。



引っ込みがきかなくなってるだけ。


結局昼休みに菅原から出た答えは由良にとって難題であり、引っ込みがきかないといわれてもなにが引っ込みがきかないのかもわからなかった。


「…どうしたの、すっごい顔してるケド」

「んぁ!?すっごい顔?」


顔面をペタペタと触る由良に対し、月島はフッと吹き出すと、由良の頬をつねった。


「アホ面」

「うーッ!なひほふるんは!」


由良の抵抗に月島は笑みを零すと、すっと手を離した。そして、視線を反対方向にズラすと、はぁとため息をついた。


「何その俺んことバカにする感じ!」

「いや、バカでしょ」

「バカだけど!バカだけど!」


月島は視線を由良に戻し、ため息をもう一度確認するかのようについた。


「ホントにバカだよ...」




.

「バカバカいうなー!好きでバカやってるわけじゃないんだかんな!」


由良は月島の前に立ちはだかり、月島より顔一個半ほどの身長を大きく見せようと背伸びをした。
腰に手を当てて、のぞき込むように月島を見ると月島はいつもの様に目線をそらした。

由良はその様子が気にいらなかったのか腰に当てた手を月島へと伸ばし、両手で頬を挟むと顔を無理やり向けさせた。


「ケイ!いつもそうやって視線そらしてさ!俺ばっかケイのこと好きみたいじゃん!ケイは俺といるのやなの?やならやって言ってくれないと俺バカだからわかんないよ...」


少しの告白を織り交ぜた由良は馬鹿なことを言ってしまったと言葉が徐々に小さくなっていく。顔を赤く染め思わず言葉の途中で視線を逸らした。

(でも、だめだ。ヤダって言われたらさみしいから。さみしくて、やっていけない。)

返答がないまま、自暴自棄になっていく由良はどんどんと、キモいとか言われたらどうしよう。友達やめちゃわないで。などと考えを進ませ涙が溢れ出てくる。


思わず両手を月島から離し袖口で涙を拭っていると、はぁ、と何度目かのため息が頭の上から聞こえてきた。


やだ、ごめんなさい。友達でいて。きらいにならないで。そもそも、きらいなのかな。


頭の中でグルグル回る考えをとめるように由良の両頬に手が添えられ項垂れてていた頭が上へと持ち上げられる。


「ホントにバカ、嫌いなやつと一緒に帰るわけないデショ。」


由良が視線を上げると、耳まで赤くなっている月島がいた。
その言葉に思わず止めようとしていた涙がとめどなく溢れる。


「ゔーっ、バカケイッバカ」


友達でいられる。という安心感からか由良は月島に抱きつきながら涙する。


「友達じゃないカラ」


と、月島に耳元で言われ思わず顔を上げるが月島は耳元から顔を上げ月を見ていた。なにが言いたいのか由良にはわからなかった。友達でなければ何になるのか。不安が襲った。


「月が綺麗ですね。」


月島は途中まで昇る月をみてそう呟く。由良の耳に届いた言葉は少ない脳の中で掻き回されたが、答えは見つからず首を傾げると、月島は夜の中で金色に光る髪をかきながら、不敵な笑みを浮かべた。


「だからバカって言われるの自覚しなよ。バカ。」

「わかんないよ、バカなんだから。どうゆー意味なのそれ」


月島の笑みに安心したのか、由良も笑いながら返した。


「ここで一生考えてればいいよ。」


すたすたと由良を置いて歩き出す月島に、由良は隅に置いた自転車を引っつかみ、歩き出した。

2人の恋はこれから始まる。





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