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□目の前の餌を前にして
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「…………ッ」
優しく大きな手で揺すられた、それはドン(ボス)の様に火傷しそうなほど温かい手で意識が一層遠退いた。
ドン、もうすこし寝させて。いろいろあって疲れたんだ。
そう心のなかで呟いた。そして気がつく。そう、いろいろあったと。
それは夢なのではないかと思うほどにその手はドンに酷似していて怖い夢を見たと話したくなった。
「更信くん?」
その声はドンとは別物だった。
「…Don?」
眼を開ければそこには似せようにも似ることの出来ない男性がいた。
「あーよかった。このまま起きないのかと思ちゃったよ。」
ーガタンッ
「ちょちょちょっまった!タイム!」
その瞬間手を払いのけ懐からハンドガンを出した殺傷能力は普段使用している物とは比べ物にならないがこの距離なら当たれば死ぬだろう。
「……Who is it!?(誰だ!)」
殺気を帯びた眼で男を見た。
男の服装を見ると先程までの事がフラッシュバックする。
(確かにあのとき俺はドンの温かい体を血を抱いた)
ドンはこの世には居ない。
目の前の男が現実を突きつけた。
「ッ!!」
「ツヅキちゃん久しぶりィおじさん覚えてるぅ?」
そんな心境とは似つかわしくない声に男の後ろを見た。
「……片栗虎。」
サングラスに灰色い毛髪をオールバックしている男は松平片栗虎だった。
ハンドガンを懐に戻し松平片栗虎を睨んだ。
「お前がやったのか。」
睨むと言うには語弊を生じるような目付きでありそれは人ひとり殺せる眼だった。
横になっていたソファーから立てばしばらく答えない松平の胸元を掴んだ。
「テメェがやったんかつってんだ答えろ!!!!!」
「やってねぇよ。」
松平は負けず劣らずの殺気を立たせ答える、そこには悔しいという感情が垣間見れ更信は腕を落とした。
「んで、ドンが…ドンは……クソッ」
ーガンッ!
更信は思わず横の壁を叩いた、そこには大きな穴が空き手は血で滲んだ。
それでも痛みを感じることはなく大きな沈黙が続いた。
「アイツもマフィアだ、裏の世界で生きた奴の死に方くらいわかってたはずだ。お前が受け入れなくて誰がアイツをともらってやるんだ。」
沈黙は松平によって壊され、更信の胸ぐらを掴みあげる。
その表情はサングラスによって隠されていたが状況が読めていない近藤にさえその悲痛の叫びは伝わってきた。
「(とっつあんがこんなこというなんて……)」
もう一度クソッと言葉を発した更信は壁から手を離すと深く呼吸をし言葉を紡いだ。
「……あそこになんで警察がいた。」
「ありゃあ、アイツの願いだ。マフィアという組織でしか生きていけない部下たちをシャバに戻してやってくれってな。」
思わずため息をついた更信に松平は静かに手を離した。松平も鼻でため息を吐いた。
「んで、お前さんもシャバに生きてほしいってよ。『I dragged you into this world without permission.I want you to permit it.But it is not the place where you are here.So please live with my close friend』そういってんだ。お前がアイツの命令を無視すんのか?」
更信は再度胸元に手を入れた、近藤は先程の事が頭をよぎり思わず止めに入ろうとするが胸元から取り出したものは煙草でそこに火をつけ煙を吸い込んだ。
「…死んでまで俺に命令すんのかよ。ドンはそうじゃなくちゃな。Is there the reason why I decline his order?」
「ねーな。」
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